2024年10月に最も読まれた記事 オレゴン州「悪いリンゴ」キャンペーンとは
10月も最終日となりました。10月も暑い日がありましたね。
2023年、世界の平均気温は観測史上最高を記録しています。が、2024年の世界気温は2023年を上回り、過去最高になる見通しです。EUの気象機関が発表したことを日本経済新聞(2024年10月10日付)が報じていました。
10月は「食品ロス削減月間」かつ「世界食料デー月間」ということで、食のイベントが相次ぎました。
10月前半は米国に渡航しておりましたが、帰国した10月後半だけで5回の講演があり、きのう群馬県高崎市で開催された「第八回」の食品ロス削減全国大会の基調講演が無事に終わりました。パル通信読者の方もいろんな地域からお越しいただき(沖縄県からも!)ありがとうございました!
ニュースレター「パル通信」211号では、2024年10月に最も読まれた記事を含め、10月中に配信した記事のエッセンスをお届けします。
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世帯平均で年間23万円以上の食品ロスを出すオレゴン州が始めた「悪いリンゴ」キャンペーンとは
2024年10月に配信した記事で最もPV(ページビュー)と開封率が高かったのが、オレゴン州が始めた「悪いリンゴ」キャンペーンの記事でした。
2024年9月23日から10月3日まで米国に渡航し、ニューヨークでの食品ロスに関する国際会議、ポートランド、サンフランシスコ、バークレーなどでの取材をおこないました。その中で、オレゴン州の州政府の方にお会いして教えていただいた内容を本記事でまとめました。
オレゴン州では一世帯あたり年間23万円以上の食品ロスが発生しています。そこで、どのようなメッセージを発信するのが最も効果的かを探り、決定したのが「悪いリンゴ」キャンペーンでした。この効果的な内容というのが、英国の非営利組織WRAP(ラップ)が発表している内容と共通項があり、非常に興味深かったです。詳しい内容はサポートメンバーへのご登録でお読みいただけます。
予約のとれないレストラン、シェ・パニース訪問記 昼のキッチンの裏側から夜のダイニングまで
食の世界では非常によく知られているアリス・ウォータースさん。1970年代にフランスへ渡航し、地元食材の良さを活かし、スローフードの考え方も活かしたレストラン「シェ・パニース」をオープン、学校の校庭で子どもたちが野菜を育てて食べる「エディブル・スクールヤード」の教育プロジェクトも進め、その活動は世界に広がりました。
シェ・パニースは「予約のとれないレストラン」としても知られていますが、今回の米国渡航にあわせて予約し、昼と夜に訪問してきました。
日本人のシェフとして働いている宇井裕美さんにお願いし、特別にキッチンの裏側など、本来ならお客が入れない、一般には公開しないところまで見せていただきました。アリスさんの活動は書籍や映画としても紹介されています。
売れ残りの食品を安く買えるアプリToo Good To Goを試してみた!
ニューヨーク在住の黒部エリさんに寄稿していただきました。PV(ページビュー)が2番目に高かった記事です。Too Good To Go(TGTG)は、デンマークのコペンハーゲン発祥のアプリで、飲食店や食料品店で期限が迫っているものを、アプリを通してお得な値段で消費者向けに販売しています。
2019年にデンマークを取材した時にはアプリがダウンロードできましたが、その後、使わないので削除したところ、いざ使おうと思ったら日本でも米国でもダウンロードができず...エリさんに実際にお店でご購入いただいて、とても助かりました。ありがとうございました。
TGTGは、今では欧州18カ国と米国に広がっています。コロナ前はヨーロッパの国のみでしたが、2020年以降のコロナ禍で米国内にあっという間に普及したのが印象的でした。実際に使った人からは、会員にならなくても思いついたときに気軽に買えるのがいい、という意見を聞いています。
ポートランドで発酵力活用 100年以上の歴史を誇る企業の堆肥化施設を訪問
この記事は、ゼロウェイスト(ごみゼロ)の活動に取り組む方や、農家の方などに関心高く読まれた記事です。ポートランドで発酵の力を活用し、有機性廃棄物(生ごみや落ち葉、剪定枝など)を堆肥化している企業を訪問、視察しました。
この会社は100年以上も前からリサイクル活動を実施しており、単に「ごみ処理」をするのではなく、「ごみ」になってしまっているものを「資源」として復活させようという理念を持って運営しています。
米国に渡航する前、詳しい方におすすめの取材先を伺ったところ、この企業の名前が挙がってきました。ニューヨーク市でも、今月2024年10月から、有機性廃棄物のリサイクルが義務化されています。
ごみの世界の標語「分ければ資源 混ぜればごみ」にあるように、分ければ資源として使うことができる食品ロスや生ごみ、剪定枝や落ち葉などは、燃やさず資源として活用するようにと願います。
今日の書籍
朝日新聞記者のお二人が書いた本で、食品ロスと衣服ロスに関する実態を描いています。食品ロスのパートでは私への取材内容が18ページほど載っています。課題図書になった『捨てないパン屋の挑戦』(あかね書房)には、広島のパン屋、田村陽至さんが出てきます。この主人公、田村さんのことを2016年秋、朝日新聞の藤田さつきさんに紹介したところ、すぐに広島に飛んで行かれ、2017年初め、朝日新聞に掲載されて大きな反響を呼びました(後日、Yahoo!編集部の方に「井出さんは、せっかく自分だけが知っているネタなのに、なぜ自分だけのものにして取っておかないんですか」と言われました 笑)。
この本は重版になっており、ある出版社の方も「この本はすごく売れた」とおっしゃっていました。帯には元NHK「クローズアップ現代」キャスターの国谷裕子(くにや・ひろこ)さんの次の言葉があります。
豊かさと思い込んでいる社会の裏で払っている代償について様々な角度からこの本は問いかけてくる
巻末には国谷裕子さんの解説もあります。ぜひ読んでみてください。
朝日新聞社の社員の方が書いた本ですが、朝日新聞出版から出版されずに、なぜ光文社から出版されるのか、ちょっと不思議です...。
今日の映画
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、ほか
フランスでは2011年に製作され、日本では2012年に公開されました。フランスの原題は「Intouchables (アントゥーシャブル)」。触れることのできない人、といった意味です。フランス映画の歴代観客動員数で2位となる大ヒット作、日本でも16億円以上の興行収入を記録しました。
フランス・パリに住んでいる富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、頸髄(けいずい)損傷によって、首から下の体を自分で動かすことができません。フィリップと秘書は、住み込みの介護人を雇うため、候補者の面接をおこないます。
優秀な候補者が揃う中、黒人のドリス(オマール・シー)がやってきます。彼は雇われたいのではなく、失業保険を引き続きもらうためにサインがほしいだけでした。ところがフィリップは、なぜか、介護や看護の資格も経験もないドリスを採用します。
普通なら出会わない(触れ合うことのない)ふたり。フィリップは、なぜあんな男を雇ったのかと問われ「彼だけは自分のことを対等に扱ってくれる」と答えます。障害について、貧困や格差、人種の違いなどについて考えさせられ、心あたたまる、実話をもとにした映画です。
編集後記
怒涛の10月が終わったと思ったら、11月には京都、韓国、福岡、山形、上田、奈良への出張が待っています。次の講演は11月19日に山形、11月27日に都内のホテル(ホテル社員の方のみ)、12月2日に消費者庁主催、12月9日に奈良女子大学で予定されています。
11冊目となる拙著『おてらおやつクラブ物語』(旬報社)が本日10月31日に出版となりました。2022年に依頼を受け、奈良に通って取材を続けてきた内容です。中学生・高校生以上の方にお読みいただけます。
認定NPO法人おてらおやつクラブは、グッドデザイン賞で4,789件もの応募から最優秀賞にあたるグッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)を受賞しました。11月にも活動紹介の会があり、11日に博多、12日に福岡県糸島、29日に長野県上田、30日に奈良・東大寺で開催され、12月2日には築地本願寺で開催されます。私もすべて行く予定ですので、お近くの方、現地でお会いしましょう。
特に奈良・東大寺で開催される会は先着順ですので、お早めにお申し込みください。
2024年10月31日
井出留美
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