捨てられるリンゴやジャガイモ、栗殻、パイナップルなどを飼料化し、おいしいハムや肉に

ニュースレター「パル通信」253号では、捨てられるリンゴの果肉やジャガイモ、栗殻などを活用し飼料にすることで、おいしいハムや肉になる国内外の事例を紹介します。
井出留美 2025.06.22
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こんにちは。ニュースレター「パル通信」に登録いただき、ありがとうございます。明日23日から米国出張です。シアトルとボストンにくわしい方、おいしいお店やスーパー、本屋さんの情報をお待ちしております。

ニュースレター「パル通信」253号では、捨てられるリンゴやジャガイモ、栗殻などを用いて飼料化し、おいしいハムや肉にする、あるいは廃棄物を減らしてメタン発生を減らすといった国内と海外の事例をご紹介します。きのう6月21日、東京大学農学部公開セミナーに広報室員として参加した際、捨てられる残さを利用して生ハムを作る事例を聞いてきましたので、その話もご紹介します。

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捨てられる栗の殻を飼料化し、豚に食べさせて栗豚生ハムを製造

私は2015年6月より、東京大学農学部・大学院農学生命科学研究科の広報室会議に毎月出席しています。広報室では、年に2回発行する広報誌『弥生』(1)の企画や取材、年に2回開催する農学部公開セミナー(2)の企画・運営などをおこなっています。

私も2022年5月21日に開催された農学部公開セミナーで登壇(3)し、食品ロスのテーマでお話ししたことがありました。

昨日2025年6月21日に開催された公開セミナーでは、4名の先生が登壇されました。そのうち、食品残さを活用したテーマについてお話しされたのが、東京大学の実験資源動物学研究室・附属牧場の李俊佑(Li JunYou)教授(4)です。

東京大学 実験資源動物学研究室・附属牧場 李俊佑教授

東京大学 実験資源動物学研究室・附属牧場 李俊佑教授

東京大学附属牧場は、茨城県笠間市にあり、2025年で76周年を迎えます。

東大牧場では、環境負荷を軽減した「循環型有機畜産」に取り組んでいます。「循環型有機畜産」とは、家畜の排泄物を堆肥化し、堆肥化過程で消臭や滅菌をおこない、堆肥のみで家畜を育てることです。化学肥料や農薬を使わずに飼料や牧草を生産して家畜に食べさせます。家畜飼料には薬やホルモン剤、抗生物質などは使いません。

東大牧場では、牛や馬、豚、山羊などを育てながら、研究開発をおこなっています。

その一つが、栗の殻を飼料に活用することです。

東大牧場のある茨城県笠間市は「栗の里」と言われるほど栗の生産が盛んです。しかし、栗関連食品の生産過程で、大量の栗殻(栗の殻)が発生し、産業廃棄物となっています。

そこで、12年〜13年前から始めたのが、産業廃棄物となる栗の殻を入手し、それを飼料として活用した生ハムの研究開発です(5)。

2025年6月21日に公開セミナーで発表した李先生の話によれば、肉汁のアミノ酸濃度が増え、あざやかな色味になるとのこと。また、栗殻に含まれるタンニンは、牛の下痢を改善する効果もみられたと話していました。

李先生は、他にも、放置しておくと増えてしまう「竹」を活用し、竹の乾燥させた飼料を山羊に食べさせる取り組みもおこなっているそうです。

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調べてみると、「栗豚(くりぶた)」というのは、栗をエサとして育てられた白豚で、スペインガリシア州政府の認定を受けた豚のみが呼ばれる名称だそうですね(6)。栗豚は、栗の殻ではなく、栗の実(でんぷんの部分)を与えているようです。

ラ・メゾン公式サイト

ラ・メゾン公式サイト

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スウェーデンの大学で、廃棄されるリンゴやジャガイモを活用した飼料化研究

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