全国で一番コメを食べる静岡県の稲作農家の声/カリフォルニア米・自然栽培米・コシヒカリのカビ実験の結果

ニュースレター「パル通信」252号では、昨今のコメ問題について、現場の農家の声をお伝えします。
井出留美 2025.06.15
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こんにちは。ニュースレター「パル通信」にご登録いただき、食品ロス削減活動をサポートしていただき、ありがとうございます。

前回13日にお伝えした寄稿誌プレゼントについても、多くの方からリクエストいただき、ありがとうございました。本日15日(日)、希望者全員の方に向けて投函いたしました。

さてニュースレター「パル通信」252号では、昨今、報道の多いコメ問題について、全国で最もコメの購入額が多い静岡県で、稲作に励んでいる米農家の藤松泰通さんに語っていただいた声をお伝えします。

コメントがある方は、記事末尾のコメント機能をお使いください。書き手にのみ返信する方法と、読者全員に返信する方法があります。

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「日本のお米守ろう」令和の百姓一揆、トラクターでデモ

2025年3月30日、東京都港区に、トラクター30台以上が集まりました。「令和の百姓一揆」です。

農家の平均年齢は70歳を超えており、全国の農地のうち、30%以上で後継者が決まっていません。農家の時給は「97円」とも言われ、このままでは食を支える農業が立ち行かなくなります。そこで立ち上がったのが、全国の農家と、それを支える仲間たちの「令和の百姓一揆 実行委員会」です。2025年6月30日まで寄付活動も続けており(1)、寄付で集まった資金をもとに、日本の食料安全保障のために、本業のかたわら、活動を続けています。

私も、実行委員会のはしくれとして参加し、3月30日のデモのお手伝いに参加してきました。主に、メディアと国会議員の受付でした。NHKや全国紙からも複数集まりましたし、個人のジャーナリストや小規模のメディアなど、いただく名刺のたばが、みるみるうちに山のように重なっていきました。こんなに関心を持たれる活動は、そんなにないかもしれません。

2025年3月30日、令和の百姓一揆(筆者撮影)

2025年3月30日、令和の百姓一揆(筆者撮影)

昨日6月14日には、新潟県内で同様のデモがおこなわれ、新潟総合テレビが報じました(2)。また、全国紙の産経新聞も、新潟でのデモを写真入りで報じています(3)。

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静岡県浜松市の米農家、藤松泰通さんの叫び

令和の百姓一揆、実行委員会の1人に、静岡県浜松市で稲作を営む、藤松泰通さんがいらっしゃいます。藤松さんは、3町(ヘクタール)の面積の田んぼで稲作を続けていらっしゃいます。先日、静岡放送の記事にも出ていらっしゃいました(4)。

浜松市は、2023年に全国で米の購入額が1位になったほど、お米を食べる県だそうです(5)。

そんな藤松さんが、6月5日に議員会館で開かれた緊急集会で発言しました。

以下が全文です。


(以下、藤松泰通さんの発言全文。写真やデータは筆者が差し込んだもの)

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静岡県浜松市の米農家の藤松と申します。

自分は3町ほどの面積で稲作を行っています。

浜松市は米の購入額が総務省調査によると全国で第3位です。1位は静岡市で、2023年は浜松市が1位でした。静岡県は日本一お米を食べる県です。

しかし、自分の周りの田んぼは年々荒れ果て、耕作放棄地が増えており、それを自分が借りるのですが、うちだけで全ての田んぼを耕作するのは限界があります。

現在、備蓄米の放出が続けられておりますが、それもこれまで備蓄米100万トンのうち約60万トン以上が放出されて残りは30万トンほどとなっており、日本全体での1ヶ月の消費量は約55万トンのため、夏頃には備蓄米も尽きると思います。

また政府は今年の政府備蓄米の新たな補充を中止しています。これは新たに政府が大量の備蓄米を市場から買い入れると更なる不足感から価格の高騰に繋がるのではと流通への影響を避ける為だと思われます。この現状はつまり、夏以降、何か有事が起これば、その時に国民に配られる米は、無い、という状況です。

また備蓄米が放出される事による価格低下は一時的な急場しのぎであり、夏以降は品薄となり米の高騰の根本的な解決にはならないのではと思います。農家数が増えて、生産量が上がらない限り、この問題は解決しないと思います。今年は気象庁も猛暑だった去年と同じ位の気温になると予想しており、また稲の害虫、イネカメムシも埼玉県では昨年の40倍も越冬したとの情報もあり、農家数は高齢化で去年よりも確実に減っており、収穫量が下がる要素ばかりです。

またそうなるとやはり、世論の後押しをバックに輸入米を入れる、という話が持ち上がってくると思います。

そのような現在、日本では米不足解消の為、輸入米や農業の大規模化を巡る議論が巻き起こっています。「米の輸入拡大」とか「農業の大規模化を進めるべきだ」との声が多く上がっていますが、自分はその声には疑問を感じています。

2025年3月30日、令和の百姓一揆に集まった人々(筆者撮影)

2025年3月30日、令和の百姓一揆に集まった人々(筆者撮影)

5月4日に東京商工リサーチは、米農家の倒産・休廃業が過去最多となったと発表しました。また帝国データバンクでも米農家の廃業、倒産が過去最多となったと発表しています。ここでいう米農家は大小様々だとは思いますが、大規模経営体が当然含まれていると考えられます。米価がこれだけ高騰しているにもかかわらず倒産・休廃業が相次いでいるという現実は、大規模化しても農業が利益を生まない、持続できない構造になっていることを示しているではないかと思います。

実際、これまで多くの名だたる大企業が莫大な資本を投じて農業に参入してきましたが、そのほとんどが撤退、あるいは事業の縮小を余儀なくされています。企業は失敗について積極的に公表はしない事が多いです。

現在、肥料・農薬・燃料・種子・人件費のすべてが高騰を続けておりますが、これらの農業資材のほとんど90%以上は海外からの輸入に頼っており、こうしたコストの上昇は、経済成長を続ける諸外国と、30年前から経済成長が停滞している日本との経済格差が埋まらない限り、今後も続くと考えられます。

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