政府が食品ロスの経済損失公表、米超党派法案提出、欧州議会が食品ロス削減目標設定

ニュースレター「パル通信」270号では、食品ロスによる経済損失と温室効果ガス排出量の調査結果、ほか米国での期限表示法案の動きや欧州議会がEU域内で法的拘束力のある食品廃棄物削減目標を設定したことについてお伝えします。
井出留美 2025.09.21
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ニュースレター「パル通信」270号では、消費者庁が新たに発表した食品ロスの金額損失が4兆円であること、米国で食品ロス削減に向けて期限表示をシンプルにするための法案が出されていること、欧州議会が法的拘束力のある食品廃棄物削減の目標を設定したことなどについてお伝えします。

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<お知らせ>

*『食べすぎる世界』(英治出版)で日本語版序文(5,000字)を執筆しました。10月10日出版。

*『おやつのおぼうさん』(くもん出版)12月9日出版、予約スタートしました。印税の一部をおてらおやつクラブに寄付します。おてらおやつクラブは10月3日、埼玉県さいたま市の埼佛会館でイベントを開催します。一般の人も歓迎です。

*9月29日(月)18時から21時まで、FOOD MADE GOOD アワード初代大賞受賞店「とれたて魚と野菜の小料理KIGI」(永田町2-10-2)で開催する日本サステイナブル・レストラン協会のセミナーで講演します。9月29日は国連が定めた「食料ロスと廃棄に関する啓発の国際デー」。豪華なお料理がついて、チケットはたった3,000円とお得です。

*10月19日(日)10:30-、13:30ー、埼玉県川口市のキュポラで出演映画『もったいないキッチン』が上映されます。

*10月30日(木)午後、東京駅そばで第9回食品ロス削減全国大会が開催され、登壇します。

*11月4日(火)午後、神戸大学でのシンポジウムで登壇します。

*11月5日(水)午後、奈良県天理市の天理大学で講演します。

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食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の報告書を公表しました

今月9月、消費者庁の公式サイトで「食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の報告書が公表されました(1)。

消費者庁公式サイト

消費者庁公式サイト

令和7年度(2025年度)の概要図として、令和5年度(2023年度)の推計値が、以下のようにわかりやすく示されています(2)。

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食品ロスによる経済損失は年間4兆円

食品ロス量は年間464万トンで、国民一人あたり37kg/年に相当すること。

その経済損失は4兆円で、国民一人あたり、おにぎり224個/年 相当のお金を捨てていること。

温室効果ガス排出量は1,050万トン-CO2で、吸収に必要な杉の木は、国民一人あたり10本/年 に相当すること。

消費者庁公式サイトより

消費者庁公式サイトより

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国民一人あたり31,814円の経済損失

国全体での食品ロスによる経済損失は4兆円で、これを国民一人あたりに換算すると31,814円/人 となります(3)。

消費者庁公式サイト

消費者庁公式サイト

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食品ロスによる温室効果ガス排出は家庭の暖房によるものに次いで大きい

食品ロスによる温室効果ガス排出量は、1,050万トン-CO2(4)。家庭で使われる暖房による排出量に次いで大きい規模となっています。

消費者庁公式サイト

消費者庁公式サイト

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英国では、早くから、食品ロスの発生量に加えて、それによる経済損失や環境負荷(温室効果ガスの発生量)を数字で公開していました。

一方、日本では「食品ロス 何百何十何万トン」と、量(推計値)だけの公表が続いていました。

私は、日本でも経済損失や環境負荷のデータを並行して示してほしいと2021年ごろからヒヤリングの機会や記事でお願いしてきました(5)(6)。

以下は4年前、2021年に書いた記事の一部です。

***
2021年12月1日に書いた筆者の記事

2021年12月1日に書いた筆者の記事

食品ロスの量だけでなく、経済損失と環境負荷が昨年2024年から公開されるようになりました。

一歩、進歩したと思っています。

***

次に米国や英国での食品ロス削減に関連する政府や議員の動きを見てみましょう。

まず、カリフォルニア州の動きです。

今年6月にシアトルとボストンに渡航し、会議に参加した際にも、カリフォルニア州の動向が話題になっていました。

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