2024年7月に最も読まれた記事 食品廃棄大国アメリカは生まれ変わるのか? 

ニュースレター「パル通信」193号では、2024年7月に最も読まれた記事をはじめ、7月中に配信したすべての記事のエッセンスをご紹介します。
井出留美 2024.07.31
誰でも

こんにちは。ニュースレター「パル通信」にご登録いただき、誠にありがとうございます。パル通信は、無料登録のみなさま、サポートメンバーのみなさま、あわせて1,870名以上にご購読いただいています。サポートメンバーの方々には毎月定額のサポートをいただき、おかげさまで記事の執筆のみならず、食品ロス削減の啓発や、サステイナビリティの活動、ニューヨークや国内外での食品ロス取材、海外メディア記事の購入を続けることができており、感謝申し上げます。

今回のニュースレター「パル通信」193号では、2024年7月に最も読まれた(開封率の高かった)記事をはじめ、2024年7月中に配信したすべての記事のエッセンスをご紹介します。

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食品廃棄大国アメリカは生まれ変わるのか? ―米国シンクタンクReFED主催のFood Waste Summit 2024参加報告

開封率74.8%と、関心高く読まれたのが、松岡夏子さんに寄稿いただいた、米国のシンクタンクReFED(リフェッド)が主催したFood Waste Summitの参加報告でした。現地に行かれて臨場感のある、しかも密度の濃い内容を提供してくださいました。松岡さん、ありがとうございました!

英国では、2000年に英国政府が立ち上げた「WRAP(ラップ)」という非営利組織が、食品ロスを含めた廃棄(Waste)関連のデータをもとに、市民への啓発活動に尽力しています。米国では、やはり非営利組織であるReFED(リフェッド)が食品ロス関連のデータを集約し、今回開催されたようなサミットを主催して、人々の意識や行動を変えるような啓発活動を続けています。日本にもWRAPやReFEDのような組織があれば、といつも思います(思うだけですが...)。微力ながら、食品ロスを削減できるような社会の構造や仕組みに貢献すべく、啓発活動を続けてまいります。

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近年の気候変動が日本のお米の生産に及ぼす影響

ニュースレター「パル通信」では、食品ロス削減の活動に対し、サポートメンバーとして月額500円〜 をご提供いただいている方を対象に「交流会」を開催しています。2024年6月28日には対面で第9回の交流会を、6月30日にはオンラインで第10回の交流会を開催しました。

10回目の交流会では、三重県庁にお勤めで、現在、台湾に駐在している松井未来生(みきお)さんに登壇いただき、近年の気候変動が日本の米の生産にどのような影響を及ぼすかについてお話してもらいました。当日、聞き逃したという方から配信のご希望があったため、松井さんに寄稿していただきました。

私は普段、長野県に住んでいる義父母が作るお米を食べていますが、時々、市販の米も購入しています。そのブランドが、高温に耐性のある品種だと思って、うれしくなりました。松井さんがこれまでに試したお米の品種は、なんと60種類以上!そのうち、どの米が高温耐性品種なのかについてもリストにしてもらっています。これはどこにもない、オリジナルのリストで、貴重です。松井さん、ありがとうございました!

なお、松井さんのご希望により、本記事はサポートメンバー限定となっておりますので、お読みになりたい方は、登録ボタンからサポートメンバーへご登録いただけますようお願いいたします。

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ニューヨークのコンポスト事情 スマコンの生ごみはメタン再生利用に、地域の堆肥化は予算削減

2023年にも寄稿いただいたニューヨーク在住の黒部エリさん。ニューヨーク市に登場しているオレンジ色のスマートコンポスト(スマコン)の最新事情について教えていただきました。エリさん、ありがとうございました!

ニューヨーク市は、廃棄物行政に優れている韓国を、長年、研究していたそうです。最近になって、有機性廃棄物、すなわち生ごみや剪定枝、落ち葉などを埋め立てることを禁止する方針を発表しました。今は移行期間で、埋め立てずにリサイクルして活用しようとしています。とはいえ、一筋縄ではいかないようで....

本記事では、スマコンで集められた生ごみが、最終的にどこへ行くのかについても解説いただいています。

私も2022年、2023年とニューヨークへ渡航し、黒部エリさんからこのスマコンを教えていただいたので、実際に現地で使ってみて朝日新聞SDGsACTION!に記事を書きました。スマホにアプリを入れればすぐ使え、扉の開閉もスマホのアプリでできるので、とても便利。GPS機能で、どこにあるのか、どのスマコンが満杯か、余裕があるのかまでわかります。

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"食のアカデミー賞"受賞のマイケル・ポーランが警鐘を鳴らす「超加工食品」ってどんな食品?

食の分野ではよく知られている、米国在住のジャーナリスト、マイケル・ポーラン。アリス・ウォータースさんなど、米国の方の著書を読むと、マイケル・ポーランの本がたびたび引用されていて、影響力の大きさを実感します。著書の中でも『雑食動物のジレンマ』は全米で100万部を超えるミリオンセラー、世界各国で翻訳されており、日本でも上下巻に分かれて翻訳出版されています。

超加工食品、略してUPF(Ultra-Processed Food)は、肥満や糖尿病、高血圧など、疾病の一因になるということで、問題視されています。食品メーカーに勤める読者の方からは、欧州ではUPFのデメリットが注目されているとのことで、国際的な会議やフォーラムでも、UPFを提供する企業は参加を禁止されそうな風潮も感じられると伺いました。

この号、パル通信189号の「今日の書籍」コーナーでは『肥満と飢餓 世界フード・ビジネスの不幸のシステム』という本を紹介しています。ジャーナリストのラジ・パテルの著書。ラジ・パテル(Raj Patel)は、マイケル・ポーランと並んで注目されている方です。

どんな食べ物を選び、どのような食べ物を避けるようにすれば、自分自身の健康を保っていけるのか。日々実践していくためにも、超加工食品を知るのは重要です。なお、本記事はサポートメンバー限定なので、登録ボタンからサポートメンバーにご登録の上、お読みください。

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世界に共有したい日本の25の食材 小山薫堂プロデュース・シグネチャーパビリオンと食業界の有識者らが選定

2025年に開催される大阪万博を前に、「世界に共有したい日本の25の食材」が発表されました。万博のシグネチャーパビリオンをプロデュースする小山薫堂さんを筆頭に、食業界の8人の有識者が「10の視点」をもとに選定しました。本記事では25の食材について、私自身のエピソードや思いを書いてみました。25の食材の中には発酵食品や乾物、海産物などが多く含まれています。

気をつけなければいけないのは、昆布や海苔、わかめなど、資源の持続可能性が問われていることです。私はいつも個人商店(お茶屋さん)で海苔を買っていますが、2023年は「不作だから値上げ、味もよくない」と言われました。海苔や水産資源の不足が課題とされている中で、恵方巻の廃棄が続いているのは残念です。2019年から毎年、恵方巻の売れ残りの調査をしてきました。BBCで取材していただいた恵方巻の廃棄が止むようにと心から願っています。英語と日本語の記事のリンクも下に貼っておきます。

この記事を書くにあたっては、小山薫堂さんはじめ、チームの方にご協力いただきました。記事とサムネイルには小山薫堂さんとの写真を使わせていただいています。ありがとうございました!

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今日の書籍

ニューヨークで出会った米国在住ジャーナリスト、津山恵子さんが紹介されていたので読んだ本です。この本は米国のジャーナリズム論として世界じゅうで読まれているそうです。

翻訳者の澤康臣氏は、あとがきで次のように書いています。

英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所の2019年世界調査では、「ニュースメディアは力を持つ人やビジネスを監視し検証している」と考える人が、日本は世界38の国と地域の中で最下位の17%だった。

では、この責任は日本のマスメディアだけにあるのか。というと、そうではなく、

ジャーナリズムの掟の10番目にあるように「市民もまた、ニュースに関して権利と責任がある」

と書かれています。

分厚い本の中に大切なメッセージがたくさん詰まっています。たとえば...

真の目標は知的多様性

良心を貫くことはたやすくない

ジャーナリズムは目的を持ってストーリーを語ること。その目的とは、人々が世界を理解するため必要な情報を提供すること

ジャーナリストは力ある者に対し、独立した監視役を務めなければならない

などなど。

どんな職業の人でも「伝わるように伝える」ことは必要です。伝えることに関心の高い方は読んでみてください。

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今日の映画

監督:デイミアン・チャゼル

出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーンほか

2016年最高の映画と評され、アカデミー賞に14もノミネートされ、全部で50以上もの賞を受賞した映画です。公開当時、映画館で観ましたが、今回、久しぶりにタイ・バンコク経由でカンボジア・プノンペンへ行く飛行機の中で鑑賞しました。あんなに仲の良かった二人なのに、最後がせつないです...一度聞くと耳に残って忘れられない音楽も必聴です。

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編集後記

7月24日から30日までカンボジアへ行ってきました。農林水産省ASEAN事業の一環で、カンボジア王立農業大学で食品ロスの講義をしてきました。そのあとは、プノンペンからシェムリアップへ移動し、初めてアンコールワットなどの遺跡を訪問しました(Facebookの個人アカウントに写真を載せています)。

今月中旬、7月14日にJICA海外協力隊駒ヶ根訓練所時代の同窓会があって参加し、7月26日には同期隊員がカンボジアにいるので首都プノンペンで会ってきました。

企業を辞めて協力隊へ行く時点では、会社を辞めるというのは大きなリスクでした。特に母からは「せっかく一部上場企業の研究所に入ったのに、なんでフィリピンへ? しかも2年間も」と言われて大反対されました。大学一年の時に父親が他界したので、母としては、子どもがせっかく安定した職についたのに、なんだかわけのわからないところへ行ってしまうのは不安でしかなかったでしょう。が、今となっては、大きなチャンスだったのだと身に沁みて感じます。あのとき行かなければ今の私はありませんでした。

「リスクをとらないのが最大のリスク」

2024年7月31日

井出留美

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