ニューヨークのコンポスト事情 スマコンの生ごみはメタン再生利用に、地域の堆肥化は予算削減
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今回のニュースレター「パル通信」190号では、ニューヨーク在住のジャーナリスト、黒部エリさんに、ニューヨーク市が長年続けているコンポスト事情について寄稿していただきました。
黒部エリさん(ご本人提供)
黒部エリさんプロフィール
ニューヨーク在住の文章クリエイター。かつて「アッシー」などの言葉をはやらせ、講談社X文庫から「青山えりか」名義で小説を三十数冊出版。文藝春秋社から「生にゅー」上梓。NYのトレンド情報をメディアで発信。ライター、エディター、作家など書き物一般の仕事をしていて、とにかく書くのが好き!
ニューヨークのコンポスト事情 アップデイト報告
ニューヨーク市内には、街角のところどころオレンジ色をしたポストのようなものが設置してあります。これはスマートコンポストと呼ばれる、生ごみを入れられるビン(bin=容器)なのです。
2023年1月にパル通信で「ニューヨークに登場した生ごみ専用『スマートコンポスト』を使ってみた!」と題してレポートを書きました。今回はNYのコンポスト事情をアップデイトして報告します。
ニューヨーク市マンハッタンの街角に立つオレンジ色のスマートコンポスト。スマートフォンで操作して、取っ手を開けられて、中に生ごみを捨てられる(黒部エリさんご本人撮影)
スマートコンポストはNY市に400個設置
ニューヨーク市で1日に出る2400万ポンド(約10,886トン)のごみ、その約3分の1は、食品などの有機ごみだとされています。
ニューヨーク州全体では現在、週平均2トンの食品廃棄物を排出する企業や施設に対し、食品を寄付し、残りの生ごみをリサイクルすることを義務付けています。2026年からは、この基準を週1トン、2028年からは週0.5トンに変更する予定となっています。
こうした企業や施設のごみ対策とは別に、家庭の生ごみ対策として、NY市が2022年に打ち出したのが、「カーブサイド・コンポスティング・プログラム」です。
これは住宅に生ごみ専用のごみ箱を無料で設置できて、主に落ち葉や庭木、そして食品生ごみを捨てられ、それを衛生局が回収するというもの。
なかでも画期的なのが、スマートフォンでいつでも利用できるスマート・コンポスト(以下、スマコンと略)設置です。
スマートフォンにアプリの「NYC Smart Compost」をインストールすると、自分の周辺にあるスマコンが表示され、可能なビンはグリーンで表され、満杯のものはレッドで表されます。
スマートフォンでアプリ「NYC Smart Compost」をインストールすると、周辺にあるスマコンが表示される。グリーンは可能な場所、満杯の箇所はレッドで表記される(本人スクリーンショット)
グリーンのビンを選んで、投入口を開けるのには、同じくアプリで操作すればアンロックされる仕組みです。
スマホで開けないかぎり、投入口は閉まっていて、ビンも頑丈なメタルでできています。そのため従来のごみ箱でありがちだった、生ごみから出る水分が漏れたり、匂いがしたり、あるいはネズミや鴉が寄ってくるという問題がありません。
快適で便利な生ごみ専用箱であり、私自身は毎日使っています。
22年にクイーンズ区で試験的に25個設置されたのを皮切りに、ブルックリン、ブロンクス、マンハッタンなどに設置され、22年末には、275個が設置となりました。さらに23年、マンハッタンに150個のスマコンが追加。総数は400個となっています。
回収された有機ごみは、ブルックリン地区グリーンポイントにあるニュータウンクリークにある再生可能エネルギーに換える施設と、スタテン島にある市の堆肥化施設に送られるとされています。
ユニオンスクエアのグリーンマーケットに設置されたコミュニティ・コンポストのテント。現在、ロウワーイースト・エコロジー・センターが回収に当たっている(本人撮影)
スマコンの生ごみはグリーンポイントでメタンガス利用に
では、実際にスマコンで集められたごみがどこに行くのか? それを追跡調査したのが、ニューヨークマガジンの生活欄オンラインメディア「Curbed」(カーブド)。追跡するジャーナリストの執念があっぱれです。
そして突きとめたのが、スマコンの生ごみは、グリーンポイントにあるニュータウンクリークにある排水処理場に送られるということ。
ここはニューヨーク市環境保護局が運営する最大の下水処理施設で、8 つの銀色に輝く、巨大な楕円形のドーム、通称「ダイジェスターエッグ」は、遠くからも目につきます。
このプラントでは下水と、衛生局が回収した生ごみを、Engineered Bio Slurry(エンジニアード・バイオスラリー=工学的バイオ液体混合物)にして、銀色のダイジェスターエッグで、バイオガスを発生させます。
メタン発酵バイオガス発電は、有機廃棄物を燃料とした再生可能エネルギーであり、電力会社ナショナル・グリッドは、バイオガスをより高品質に精製しています。それをプラントの動力源として利用し、余ったガスは、ナショナル・グリッドの顧客の家庭や企業に送られることになっています。
これを知って、私としてはいささかショックを受けました。たしかに生ごみは「ニュータウンクリークにある施設」に送られるとは説明してあるのですが、コンポスティングという名称から、「堆肥になるのだろう」と想像していたのです。多くの市民も、そう想像していたはず。まさかメタンガスになろうとは。
となると、NY市の生ごみ・リサイクルは、コンポスト=堆肥ではなくて、正しくは再生エネルギー利用プログラムと呼ぶべきでしょう。
このバイオガスは、設備がメンテナンス、故障、テストなどで停止した場合、二酸化炭素を放出する「フレア」、つまり空中で燃やされることにされていますが、しばしばフレアが観測されていて、環境団体からは厳しい追求の声も寄せられています。
NY市衛生局のコンポスト予算が削減
メタンガス化はともあれ、スマコンが生ごみ回収に成果をあげているのはたしかです。
そのためエリック・アダムNY市長は「カーブサイド・コンポスティング・プログラム」の拡大を打ち出しています。
2024年10月にはブロンクス、マンハッタン、スタテン島にも拡大される予定で、ニューヨーク市のすべての公立学校への学校コンポストの拡大をめざしています。
ところが同時にアダムズ市長が打ち出したのが、コミュニティ・コンポスト(堆肥化)プログラムに対する予算を削減するというもの。
NY市衛生局の予算は18億ドルですが、25会計年度には500万ドルを節約するために堆肥化プログラムが廃止され、その予算の0.0027%を節約することになったのです。
ニューヨーク市での草の根運動によるコンポストは、すでに30年以上の歴史があります。
1993年、ニューヨーク市衛生局(DSNY)は地域の植物園と協力し、コミュニティ・コンポストというアイデアを打ち出しました。
そして非営利団体が提携するようになると、生ごみはファーマーズ・マーケット、コミュニティ・ガーデン、学校、公園などに持ち込まれ、街中の緑地の肥料として利用されるようになったのです。
コミュニティ・コンポストには、民間所有の公共スペースに加え、多くのボランティア、植物園、非営利団体(GrowNYC、Big Reuse、Earth Matter)が参加してきました。
何十年もの間、住民にサービスを提供してきた8つのコミュニティ・コンポスト・プログラムの予算を削減し、現在、そのうちの3つのプログラムがなんとか存続している状態です。
2011年に設立されたGrow NYC(グロウニューヨーク)コンポスト・プログラムは、家庭用生ごみの回収場所を運営し、地元でコンポスト作りを行うことを目的としてきました。
ニューヨーク市内に200カ所以上ある生ごみ集積場があり、毎週7,000人が定期的に参加していて、スタテン島と、ガバナーズ島にある市の堆肥化施設に送られ、毎週25トン以上の生ごみをコンポストにしてきていました。
けれども市の予算削減で、グロウNYCの生ごみ蒐集サイトは、2024年5月で閉鎖されてしまったのです。2022年には、2,695,000パウンド(約1347トン)の生ごみを回収、堆肥化していたのにも係わらず、です。
また非営利団体の『ビッグ・リユース』は、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの70カ所で年間70万ポンドの生ごみを回収し、コンポストとして完成させ、その一部を地域の庭園や公園、学校などに還元して食糧生産に役立ててきましたが、その回収場所の多くは閉鎖されることになったのです。
『アース・マターズ』は、現在も生ごみを処理しているコミュニティ・プログラムですが、『ビッグ・リユース』同様、処理を縮小。
ユニオンスクエアで生ごみを回収して堆肥に
ユニオンスクエアのグリーンマーケットには、生ごみの回収バケツがあり、現在LES Ecology Center(ロウワーイーストサイドエコロジーセンター)が生ごみの回収に当たっています。
ユニオンスクエアのグリーンマーケットに設置されたコミュニティ・コンポスト。グリーンのバケツに生ごみを捨てられる。後ろにあるのが回収輸送するLESエコロジーセンターのトラック(本人撮影)
この非営利団体は、1990年設立。30年にわたって市民からの生ごみ回収をし続けていて、生ごみを収集し、ビッグ・リユースまたはアース・マターズまで運搬しています。現在、同センターは、20カ所あった生ごみ処理場を6カ所に減らさざるを得なくなりました。
コミュニティコンポストの利用者は、コンスタントに使っている人が多く、生ごみだけを捨てていく(本人撮影)
生ごみが堆肥になるまでかかる時間は十ヶ月。手間も時間もかかります。
使い方の説明。「ステッカーや輪ゴムをあらかじめ取り外すこと。紙袋は空にして、小さくちぎること。生ごみは匂いとハエを避けるために冷凍庫に保存すること。生分解性ブラスティックバッグも開けて中身を捨てること」といったガイダンスが書いてある(本人撮影)
生ごみからできた堆肥は同センターのテントで、市民にも安価で販売しています。
同団体で、生ごみの回収を担当していた職員は、
「スマートコンポストの生ごみ回収は、たんなる埋め立てごみになるよりは良いですが、堆肥にするプログラムではありません」
と語ります。
コミュニティコンポストのテントで売っている生ごみから作られたコンポスト(堆肥)(本人撮影)
生ごみから出来るコンポストを見せてくれるセンターのワーカー(本人撮影)
もうひとつコミュニティ・コンポストの大事な役割は、生ごみに対する教育でしょう。
コミュニティ・コンポストの中には、若者のインターンシップやマスター・コンポスト・プログラムを主催しているところもあるし、廃棄物削減やワークショップやその他の教育活動を行っているところもあります。
従来、余った食品を捨てることを「もったいない」と感じてこなかったのが、アメリカの文化で、そこでいかに食品ロスを減らして、生ごみをコンポストするか、市民に教育していくコミュニティ・コンポストは、非常に大事な存在だといえます。
コンポストは1ポンド(約454グラム)で2ドル、5ポンドで7ドルと、お手頃価格で販売。ポッティングソイルとは、基本用土(土)と堆肥を混ぜたもので、植物を植えるのに使用できる。堆肥は栄養のために加えて使うもの(本人撮影)
生ごみに残る課題、堆肥化プログラム再開を
街角で生ごみを捨てられるスマコンは、とても便利で、私自身は毎日利用しているのですが、生ごみをいかにリサイクルするかは、まだ課題が残ります。
NY市のさまざまなエリアに住む知人たちに確認したところ、必ずしもみんながスマコンを利用しているわけではないこともわかりました。
「駅の近くにあるので出がけに運んでも、故障したり、満杯だったりすることが多いから、自分のビルのダストシュートに入れる」
「自宅の近くにスマコンがなくて、コンポストサイトまでは遠いので、ビルのダストシュートに入れる」
といったフィードバックもあり、利用していない住民も多いのです。
個人的な見解ですが、NY市の高層ビルに住んでいる住人は、ほぼスマコンもコミュニティコンポスト回収も使わないだろうと推察できます。というのは、高層ビルでは各階にゴミを捨てるダストシュートが設置されているからです。
たとえば20階の眺めの良い部屋に住んでいて、その階にあるダストシュートでごみを捨てられるのに、わざわざ下まで運んで、コンポストに行くでしょうか。たぶんしないですよね。そのビルごとに、生ごみを回収するビンを義務づけないかぎり、進まないのではないかという気がします。億単位の高層アパートメントであれば、資金はいくらでもあるはずなのですが。
一方、コミュニティ・コンポストは、もともと2階建てから5階建てくらいの低層建築物が多いクイーンズやブルックリンで多く活用されてきたもの。一戸建てや小規模の集合住宅だったら、自宅に生ごみが増えるよりもコンポストを利用したり、あるいは庭の落ち葉をカーブサイドのごみ箱で回収されたりすることを望むでしょう。
自分たちのコミュニティをサスティナブルに保とうとする、SDGs意識が高い住民たちが培ってきたコンポスト活動に対する予算が削減されるのは、残念なかぎり。
2024年7月にあるNY市の予算編成で、コミュニティでの堆肥化の予算が組まれることを望みたいところです。
LESエコロジーセンターを支援するドネーションを呼びかけている。NY市のコミュニティコンポストに対する予算削減により、草の根運動のコンポストが存続の危機に。ぜひ民間コンポストも続けて欲しいところ(本人撮影)
以上、ニューヨーク在住ジャーナリスト、黒部エリさんの寄稿をお届けしました。実際に使っていらっしゃるからこそわかるメリット、一方でニューヨーク市が目指した方向にはまだ到達できていない課題などがよくわかりました。「教育が大事」という言葉にも納得です。
私は2022年9月に開催されたニューヨークでの食品ロス削減会議に参加し、その際、黒部エリさんにお会いして、スマートコンポストのお話も伺いました。2023年1月に寄稿していただいたのも、そのご縁からです。
その後、2023年9月に再度ニューヨークの会議に参加した際(このときもエリさんにお会いしました)、実際に自分でもスマートコンポストを使ってみて、朝日新聞に「ニューヨーク市で進行中 日本が学ぶべき生ごみ・有機ごみの資源化対策」と題した記事を書きました。
でも、今回、記事中で紹介されたCurbed(カーブド)の記事にあるように、集めた生ごみがいきつく先は、われわれが想像している通りではありませんでした....。
2023年9月には毎日新聞ニューヨーク支局の八田浩輔(はった・こうすけ)さんにお会いし、後日、スマコンに関する八田さんの記事の中で私のことも紹介してくださいました。この記事でも、
800万人が暮らす巨大なこの街では、多すぎるごみを堆肥に変える施設が足りず、当面の間は別の装置を使って、発生したメタンガスを回収して電力を作るために燃やすことになりそうです。環境団体などは「結局それでは、温室効果ガスの二酸化炭素が出てしまう」と批判しています。
と書かれています。
とはいえ、課題はありつつも、石橋を叩いて叩いて結局は渡らない....というのではなく、まずはチャレンジしてみるというNY市の姿勢は評価したいです。2024年9月に、ふたたびニューヨークへ行き、食品ロスの会議に参加しますので、スマートコンポストの現状を自分の目で見てきたいと思っています。
黒部エリさんが、山﨑ナナさんの立ち上げた受注生産のファッションブランド「YAMMA(ヤンマ)」について書いた記事も写真が盛りだくさんで楽しく、何度も読んでいます。ぜひご覧くださいね!
今日の書籍
前回のパル通信189号で「超加工食品(UPF)」についての記事を書いたところ、読者の方から「UPFは現在、栄養不良の二重不可(飢餓と肥満)の一因として問題視されており、UPFを製造・販売する食品企業は国際的な会議にも入れないような風潮すら感じる」といった趣旨のコメントをいただきました。いただいたコメントで、そうだ、米国のジャーナリスト、ラジ・パテルのこの本があったと思い出したのでご紹介します(記事の感想いただいてありがとうございました!)。
ラジ・パテル(Raj Patel)の、現在の食料システムと巨大食品企業を批判する姿勢は、米ジャーナリストのマイケル・ポーランと共通しています。「肥満は社会的に作られる」「軍隊に起源を持つファストフード」「パン食の世界的普及という戦略」など、人々の味覚や食生活が、知らずしらずのうちに操作され、変えられてきた背景を深く分析し、論じています。これまで世界11カ国以上で翻訳され、絶賛されている本です。
この本の翻訳者、佐久間智子さんは「最貧国から食料を奪う日本」と題して日本の食料政策について言及しています。彼女は、著者のラジ・パテルが最も訴えたかったことは
フードシステムは、食料を生産している人々と、これを食している人々の双方を犠牲にする形で成り立っているという事実
だと述べています。翻訳版は420ページ以上ある分厚い本ですが、食の分野をなりわいとする人にはぜひ読んでほしい一冊です。関心のある方は、ラジ・パテルの公式サイトもお目通しください。
今日の映画
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、ダバイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサほか
監督は、米国・ネブラスカ州出身のアレクサンダー・ペイン。これまでアカデミー賞に7回もノミネートされています。これまでの作品には『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』『ファミリーツリー』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』などがあります。私はこれらの中では、監督の出身地を舞台にした『ネブラスカ』が好きです。
アレクサンダー・ペイン監督の今回の新作は、『サイドウェイ』でも主人公をつとめたポール・ジアマッティを起用。舞台は1970年代、米国マサチューセッツ州ボストンにある名門校バートン校。全寮制の寄宿学校で、学生や同僚教師から嫌われている教師ハナム(ポール・ジアマッティ)は、ほぼ全員が帰省するクリスマス休暇、にもかかわらず、さまざまな事情で帰省できない学生たちの監督役を務めることに。母親が再婚し新婚旅行へ行くため、急遽帰省できなくなった学生アンガス(ドミニク・セッサ)、寄宿舎の食堂の料理長メアリー(ダバイン・ジョイ・ランドルフ)、そしてハナムの3人が、なぜか擬似家族のような形で、2週間のクリスマス休暇をともに過ごすことになりました。
3人とも主義主張がはっきりしているため、最初はぶつかりあうのですが、相手の本音や弱みを知ることで、すこしずつ、心を許していきます。堅物(かたぶつ)だった教師のハナムは、学生のアンガスに振り回されるたび、すこしずつ、考え方が柔軟になっていきます。ともに過ごすまでは知りませんでしたが、アンガスは、ハナムと同じようなメンタルの症状を抱え、向精神薬を服用していました。アンガスの母親が離婚した前の父親(実父)の実態も知り、最後のシーンでは、ハナムは、驚くべき行動に出ます。「えーーー!そこまでしなくていいのに!」と思ってしまいました。アンガスが将来、あのときの先生のおかげで今の自分がある、と思ってくれることを祈ります。
世代も育ち方も環境も異なる3人が、クリスマス休暇に「置いてけぼり」を喰らったことで、人生のひとときを共有し、相手の弱さや寂しさを知り、互いを認め合っていく、その過程に心が動かされます。この映画を観ると、他人に決して弱みを見せずに強がっている人は人生損してるかも?と感じます。映画の登場人物たちも、普段の生活では自分の恥ずかしい部分やコンプレックスを決して他人に見せなかった。でも、2週間ずっと一緒に家族のように過ごし、弱さをさらけ出さざるを得なくなったことで、魂の深い部分で触れ合うことができた。だからこそ、ハナムはアンガスに対して最後のシーンのような姿勢をみせることができたのではないでしょうか。
ユーモアがところどころのシーンに盛り込まれていて、クスッと笑えるので、孤独や疎外感を描いているにもかかわらず、暗くなりすぎません。批評家にも高い評価を得ている本作です。
編集後記
2022年7月31日、パル通信59号でも紹介した、2022年にミャンマーで拘束され、その後、無事に解放され、今は日本で暮らしている久保田徹さんが、2024年7月18日(木)23:25、NHK BSスペシャル『境界の抵抗者たち』で特集されます。
農林水産省ASEAN事業の一環で、今月下旬、カンボジア王立農業大学へ食品ロスと気候変動の講義に行きます。渡航の7日前からしかビザを申請できないそうで、オンラインで申請するとのこと、渡航前までにちゃんと取れるのだろうか?すこしドキドキしています。JICA海外協力隊時代の同期がカンボジアで政府の通訳などをつとめているので、再会が楽しみです(その前に日本でも会います。今日はJICA海外協力隊同期の同窓会)。
米国の、食品ロス関連の企業のVice Presidentと、三連休明けにzoom会議をします。朝7時!米国は18時。イタリアからも参加されるのですが、イタリアはなんと夜中の12時。欧州・米国・日本の三者がそれぞれ負担のない時間帯って、いつごろなんでしょうね...(欧州のオンライン食品ロスセミナーも、いつも日本時間の夜中1時、2時スタートなので、なかなか参加できず残念)
監事をつとめている「おてらおやつクラブ」が、7月15日午後、北海道札幌市で「子どもの貧困について考えようin北海道」を開催します。会場とオンラインのハイブリッドで開催されますので、遠方の方もぜひこの機会にお申し込みください。
また、おてらおやつクラブは7月1日から8月31日まで、京都のJAMMIN(ジャミン)と組んでのオリジナルTシャツやエプロン、バッグなどを販売しています。寄付つきです。私も前回に引き続き、今回も購入しました。第一弾、第二弾、第三弾のデザイン、すべて購入できます。夏休みは学校給食がなくなるので、給食に頼っている子たちは食べ物が特に少なくなってしまいます。ひとり親家庭のこどもたちへの支援にもなりますので、ぜひサイトをご覧くださいね。
2024年7月14日
井出留美
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