10月に最も読まれた記事 日本初のゼロ・ウェイストスーパー パル通信(145)
こんにちは。ニュースレター「パル通信」に登録いただき、いつも食品ロス削減の活動をサポートしていただき、ありがとうございます。今号では、2023年10月に最も読まれた記事(開封率の高かった記事)をはじめ、10月中に配信したすべての記事のエッセンスをご紹介します。
私は10月29日に長野県飯田市で開催されたエシカルシンポジウムで食品ロスの基調講演をしてから、10月30日に石川県金沢市で開催された第7回食品ロス削減全国大会に参加しました。17時前に閉会してからすぐに配信したので、内容はざっくりですが、Yahoo!ニュースの記事にまとめてあります。パル通信を購読くださっている、東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科准教授の野々村真希さんもトークセッションで登壇されていましたね!
日本初のゼロ・ウェイストなスーパー斗々屋、3年ぶり都内に3店舗目オープン パル通信(143)
10月中に最も読まれた記事は、日本初のゼロ・ウェイストスーパー、斗々屋(ととや)の3店目がオープンした記事でした。2023年10月19日に開店し、20日に現地へ行って写真を撮ってきました。2021年7月31日に京都本店がオープンした際にも京都まで行ってYahoo!ニュースで記事を書きました。店内に700から800アイテムの量り売り商品を扱う京都の店と比べると、今回の3店舗目は、店舗面積は小さいものの、行き交う人の興味や関心を惹きつける、ゼロ・ウェイストの買い方や暮らし方のきっかけづくりになりそうな店でした。実際にこの記事を読んで、代官山まで行ってくださった読者(議員)の方もいらっしゃいました(ありがとうございました!)。
知ってほしい、食品ロスの裏側 パル通信(140)
次に読まれたのが、首都圏で、賞味期限の迫った食品や期限の過ぎた食品をお買い得な価格で提供するスーパー、マルヤスの松井順子(ゆきこ)さんが寄稿してくださった記事でした!
コロナ禍や物価高、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピック、気候危機による猛暑など、ここ数年、さまざまな事態が発生し、そのたびに食料品販売の現場は影響を受けました。ひとくちで「食品ロス」と言っても、その実態はさまざまです。具体的にどのような影響があったのか、どのような食品ロスが発生しているのか、写真をふんだんに盛り込んで説明してくださり、私たちの購買行動のあるべき姿を問いかけてくださっています。松井さんの記事を読んで、その食品ロスの多さに圧倒されたという読者の方もいらっしゃいました。松井順子(ゆきこ)さん、このたびの寄稿、ありがとうございました。
賞味期限の工夫!食品企業が見習うべき事例とは パル通信(144)
マルヤスの松井順子(ゆきこ)さんの記事に続いて、三重県松坂市で管理栄養士として食品の販売に携わる、松井順子(じゅんこ)さんの取り組み事例です。松井さんが、このたび、パル通信の記事を読んで、既存の賞味期限表示をわかりやすく工夫してくださいました。
デンマークでは、賞味期限表示の工夫やさまざまな取り組みによって、5年間で国全体の食品ロスが25%削減されています。英国では、青果物につけられていた賞味期限を撤廃したり、牛乳の消費期限を、よりゆるやかな賞味期限に変えたり、食品ロスの一因となっている賞味期限表示を変えていく動きが活発に見られています。
きのう10月30日に開催された第7回食品ロス削減全国大会でも、消費者庁食品ロス削減推進アンバサダーに就任されているロバート馬場さんは、賞味期限のことを「消費期限」とおっしゃっていました。アンケートをとれば「賞味期限と消費期限の違いは知っている」と答えるでしょう。でも混同している人は多いはずですし、実際の買い物の現場で奥から取る人が多いのもスーパーやコンビニで実際に目にしています。
具体的に実践してくださったこと、県職員にも説明した上で実際の商品の表示をよりよい形に変えてくださったことに感謝を示します。松井順子(じゅんこ)さん、ありがとうございました!
ニューヨークで開催された食品ロス国際会議に出席して パル通信(141)
2023年9月にニューヨークで開催された食品ロス国際会議に参加してきました。本記事は、その報告です。Climate Week(気候危機週間)と題して、9月の後半にはさまざまなイベントや会議が開催されていました。この気候危機と食品ロスは大きな関係があります。でも、日本では、そのことはほとんど報じられていません。
食品ロス問題に関わる人はもちろん、今年の猛暑に苦しんだ人にも知っていただきたい内容です。
川口のうまいもの パル通信(142)
全国を講演・出張するたびに訪れる飲食店を紹介する「うまいもの」シリーズ。このシリーズの記事を読んで、実際に店舗に行かれる読者の方もいらっしゃいます。これまで10人近くが、紹介した記事を訪問され、写真や文章などでお知らせいただきました。ありがとうございました。
埼玉県川口市は、全国的にはあまり知られていないかもしれませんが、優れた飲食店や食に関わるお店があります。東京都内の有名店にも劣らない店も。このことは、菓子専門家の方をお連れしたときに知りました。都内にはめったに置かれていないものが、川口のお店には置かれていたのです。ここのマカロンは絶品です。有名店よりおいしい。素材のおいしさが活かされていて、もう何百個買ってお使いものにしたかわからないぐらいです。
以上、2023年10月に配信した記事をご紹介しました。サポートメンバー限定記事に関しては、登録ボタンから「サポートメンバー」になっていただけるとお読みいただけます(月額500円〜)。
今日の書籍
医学博士であり、栄養学の専門家でもある、東京農業大学名誉教授の田中越郎先生が「飲み物」に特化して書かれた本です。
私は14年5ヶ月、食品メーカーに勤めていたので、食品業界のことや食品企業についてはすこしだけ知識があります。田中先生が飲料メーカー13社のIR資料を調べ、各社に質問した結果をまとめて本に載せてあります。これがとても興味深かったです。というのも、「食品企業」とひとくちに言っても、社風や新製品の出し方など、その姿勢はさまざまだからです。拙著『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、5刷)のあとがきに書きましたが、食品企業の中には「どんどん産んで、どんどん殺す」企業もあります。流行りの新成分を既存商品に入れて「新製品」と謳い、期待したほど売れなければすぐに「終売(しゅうばい)」する。そんな姿勢は、商品を「人」だと考えているならできないのではないか、安易に殺すことはできないのでは、という趣旨を拙著のあとがきに書いたのです。田中先生がこの本の執筆にあたり、飲料メーカー各社に質問した結果、けんもほろろの対応をした企業もあれば、恐縮するほど親切に回答してくれた会社もあったとのこと。その評価が三段階で書かれていて、私が高く評価していた会社に「二重丸」がついていてうれしくなりました。他の12社はマルか三角でした。最高評価の二重丸の会社は、新商品を出して、さほど売れなくても、年月をかけて育てていく、そんな会社です。商品を、あたかも人を育てるように扱う、その姿勢は素晴らしいと感じていました。今回、田中先生が取材された結果と、私が当時から感じていたことが合致していて、とても嬉しくなりました。さて、どの会社でしょう?気になる方は、ぜひ本を読んでみてください。
食品メーカー時代は、トクホ(特定保健用食品)の申請や認可、書類の提出などにも携わっていたので、本で書かれている、医薬品と医薬部外品、トクホ、機能性表示食品、栄養機能食品、一般食品の違いの表などはとても詳しく、参考になりました。「カロリーゼロ」と表示されているのが、実はゼロではない、というからくりも、知る人ぞ知る内容ですよね。私の好きな炭酸水の効用も書かれていて、専門家に認めてもらえてうれしく思いました。「飲料」に特化してここまでまとめた本は、これまでなかったのではないでしょうか。
「遮光も広い意味での防腐剤です」という言葉が本に登場します。この言葉は、食料品を販売するすべての店舗に読んでもらいたいと思いました。というのも、酷暑の夏場ですら、店頭で直射日光にあてた状態で食品や飲料を売っている店があるからです。あの強い日差しのもとで、飲料や食品の中の品質が変わっている、脂質が酸化してしまっていると思うと気が気ではありません(これも『賞味期限のウソ』に店頭写真入りで書きました)。
もし私が飲料の分野で本を書くとしたら.....備蓄としての飲料の役割や、ペットボトル飲料の賞味期限表示の変遷(2013年以降)、容器包装の廃棄を最小限にする飲料の選び方、などを書くかなあと考えました。たとえば災害時に備えて備蓄されるペットボトルのミネラルウォーターの「賞味期限」は容量が担保される期限であって、おいしさのめやすではありません。ガラス瓶であれば水は蒸発しませんが、ペットボトルの場合、容器を介して水が蒸発していくため、書いてある容量が担保できる期限が書かれているのです。ミネラルウォーターは濾過・殺菌されているので、書いてある期限が過ぎたからといってすぐに捨てる必要はありません。私は炭酸水が好きなので、以前はペットボトルをケース買いしていました。が、2018年ごろ、ゼロ・ウェイストの活動に励む若者に出会い、彼らがマイボトルやマイストローを使ってごみを出さない姿を見て自分が恥ずかしくなり、炭酸水を作る機械を買いました(1万円台で購入できます)。ごみは激減しましたし、何より気持ちがスッキリしました。2022年4月に「プラスチック新法」が施行され、製造企業にとって、できる限り使い捨てプラを出さない姿勢が求められるようになっていますが、現状は果たしてどうでしょうか。そのような観点からも、飲料メーカーの企業姿勢を読み解いてみたいですね。
田中越郎先生の『なぜ、一流は飲み物にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)ぜひ読んでみてください。
今日の映画
『ハント』(2022)(日本公開は2023年9月29日)
監督・脚本:イ・ジョンジェ
音楽の分野でも世界を席巻する韓国ですが、映画の分野でも、早くから世界を見据えて制作に挑んできたことが伝わってきます。私はバンバン人を殺すタイプの映画は好きではないのですが、観客の目を離さない、関心を惹きつける手法はすごいなと思いました。この映画は2022年、韓国での公開時には初登場 1 位を獲得しました。イ・ジョンジェが初めて監督をつとめた作品です。彼は俳優チョン・ウソンとW主演をつとめています。第75回カンヌ国際映画祭ミッドナイトスクリーニング部門でこの映画が上映されると 7分間のスタンディングオベーションを受けたそうです。第47回トロント国際映画祭、第55回シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか世界中の映画祭を席巻し、第43回青龍映画賞、第31回釜日映画賞ほか数々の映画賞で新人監督賞を受賞しました。
世界中の映画祭を席巻
圧倒的火力🔥
『#ハント』日本版予告
——🔫
全員、スパイの容疑者👥
裏切り者は誰だ ──
壮絶な頭脳戦・銃撃戦・諜報戦で贈る
スパイ・アクションの傑作💥
初監督・主演 #イ・ジョンジェ
✖️主演 #チョン・ウソン
9.29(金)公開🎬
編集後記
フードマイレージの研究と啓発で知られる中田哲也さんが、拙著『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)をご自身のメールマガジン「フード・マイレージ資料室 通信 No.277」でご紹介くださいました。農林水産省でお勤めだった中田哲也さんのデータは、ほかの拙著(『捨てられる食べものたち』など)でも何度も引用させていただいております。ありがとうございます!
私が2015年から毎月お手伝いしている東京大学農学部広報室が、ハチ公生誕100周年セミナーをハイブリッドで11月4日に開催します。ハチ公といえば渋谷ですが、東大農学部の弥生キャンパスにもハチ公の像があるんですよ。飼っていたのは東大農学部の上野英三郎先生です。私もシンポジウム当日はキャンパスにおります。会場は、1号館2階の第「8(ハチ)」講義室です。指導教官だった溝口勝先生がトップバッターです。
10月は食品ロス削減月間の1ヶ月でした。季節の変わり目ですので体調に気をつけて10月最後の1日を過ごしましょう!
2023年10月31日
井出留美
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