IPCCの第六次報告書を読み解く:気温上昇1.5℃に抑える8つの方法とは パル通信(102)
2023年3月20日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書(AR6)の統合報告書を発表しました。
数百人の科学者が、数千の学術論文からまとめたもので、IPCCの報告書は、地球温暖化や気候変動に関する報告書の中でも最も信頼できるものです。準備に8年間を費やしたとのこと。
ただ、専門的なので、パッと見ただけでは理解しづらい部分があります。そこで今回は、The Guardianの記事をもとに編集し、「気温上昇1.5℃に抑えるための8つの方法」についてお伝えします(記事で挙げられた8項目は、私がより伝えたい内容から順に並べ変えております)。
この記事を書く理由
2023年3月20日、IPCCが発表した第6次報告書の重要ポイントと、具体的に何をしたらいいのかを、できるだけわかりやすく伝えるため
「パル通信」の読者の方が、この報告書の発表に触れて、「難しい」とつぶやいていたので。
この記事でわかること
IPCCが発表した第6次報告書の重要ポイント
パリ協定の「気温上昇1.5℃」に抑えるための8つの方法
2023年3月20日、IPCC発表「第六次報告書」
各専門機関や省庁が、重要ポイントをまとめて発表しています。中でもWWF ジャパンの発信は、シンプルでわかりやすいと感じました。2035年までに温室効果ガスを60%も削減しなければならない。このままいくと、もう取り返しのつかないほど損失と損害が増えてしまう。1950年に生まれた人に比べて、2020年に生まれた人は、地球温暖化の悪影響にさらされて、損失や損害を被ってしまう(下記の図)。世代間の差が大きく、あまりに不公平だ。だからこそ、いますぐ具体的に取り組まなければいけないのだ。気温上昇を1.5℃に抑えるための解決策はすでにあるのだから、というものです。WWFジャパン公式Twitterのツイートは、この下の方に貼り付けてありますので、見てみてください。
WWFジャパンの報告より
国立環境研究所
文部科学省
全国地球温暖化活動防止推進センター
国際農研(JIRCAS:ジルカス)
気候ネットワーク
wwf.or.jp/activities/act… IPCC報告書AR6発表「2035年までに世界全体で60%削減必要」 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から最新の科学の知見をまとめた第6次統合報告書(AR6)が、2023年3月20日 www.wwf.or.jp
日本のメディアも、各紙、温度差があるものの、報じています。
時事通信
日本経済新聞
朝日新聞
読売新聞
毎日新聞
電気新聞
2023年3月23日付「IPCCが第6次報告書 1.5度上昇『可能性高い』」
これら省庁や専門機関の発表、マスメディアの報道は、現状が危機的状況であることを示しています。
では、具体的にわれわれは、気温上昇を1.5℃で抑えるために、今日からどう取り組めばよいのでしょうか。
ここからは、英国の大手新聞、The Guardian(ガーディアン)が2023年3月21日付で掲載した記事を翻訳し、「気温上昇1.5℃に抑えるための8つの方法」についてお伝えします(記事で挙げられた8項目は、私がより伝えたい内容から順に並べ変えております)。
1. 農業と食べ方を変える(Change agriculture, and change the way we eat)
植物性食品を中心とした食生活に変えること。肉や乳製品の接種を少なくし、よりサステイナブルな(持続可能な)食生活にシフトすること。
精密農業技術を駆使し、気候や自然への影響を抑えながら、高い収量を維持する農法で農業をおこなうこと。
食品ロスを減らすことが重要。世界では、人が食べるために生産された食料の3分の1が廃棄されている。
2. 太陽光発電と風力発電を活用する(Solar and wind power)
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、今では、世界のほとんどの地域で化石燃料よりも安価です。
IPCCは、
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太陽光発電
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風力発電
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農業への土地転換を減らすこと
の3つが、世界的に温室効果ガス排出量を削減する可能性が最も高い対策であると発表しました。
注目すべきは中国です。2022年、中国では、世界の他の国々の合計とほぼ同じ量の再生可能エネルギーが送電網に追加されました。また、中国は、クリーンテクノロジーに使用される重要な鉱物をほぼ独占しています。