野菜や果物の包装はプラ・紙・無しのどれがいい? パル通信(13)

世界的に、使い捨てプラを禁止する国が増えてきました。今回は、野菜や果物の包装は、プラスティック・紙・無しのどれがいいのか、日本のマスメディアが報じない内容もふまえて考えてみます。
井出留美 2021.11.07
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先日、米国とイタリアが共同開発したプラスティックを使わないパッケージが、容器包装の団体から賞を授与されました。プラよりは紙の方がいいのでしょうか。もしくは、まったく何も使わない方がいいのでしょうか。

さまざまな見方があると思いますので、それらを俯瞰して見てみたいと思います。

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世界は包装無しの方向へ

そもそも、世界は「包装無し」の方向へ動いています。たとえばフランス政府は、2040年までに使い捨てプラスティックをなくすと発表しました。来年2022年1月から、バナナやりんご、トマトやじゃがいもなどのプラ包装は禁止され、その後も段階的に禁止されていきます。

上のCNNの記事の概要は、次の通りです。

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2020年2月に制定された法律を施行するため、フランス政府は、2022年1月1日から、プラスティック製の包装を禁止する、約30種類の果物と野菜のリストを発表した。このリストには、ネギやナス、トマトのほか、リンゴ、バナナ、オレンジなどが含まれている。
「私たちは日々の生活の中で、とんでもない量の使い捨てプラスチックを使用しています。循環経済法は、使い捨てプラスチックの使用を削減し、他の素材や再利用・リサイクル可能なパッケージへの置き換えを促進することを目的としています」と、フランスの環境省は声明を発表した。同省は、果物や野菜の37%が包装されて販売されていると推定しており、この対策により、年間10億個以上の無駄なプラスティック包装を防ぐことができると期待している。
フランス果物販売業者連合会のフランソワ・ロック(Francois Roch)会長は、段ボールへの切り替えは、短期間では難しいと語り、「バラ売りの場合、多くのお客さまが果物を触ってしまいます。自分が買おうとしている果物を他のお客に触られることを、消費者は望んでいません」と述べている。
フランスでは、使い捨てプラスティックのうちの半分は、たった20社で作られている。このパッケージの禁止は、プラスティックを廃止するためのフランス政府の何年間かにわたるプログラムの一部だ。
フランスでは、2021年から、プラスティック製ストロー、カップ、カトラリー、発泡スチロール製の持ち帰り用箱を禁止している。カットフルーツや、限られたデリケートな(つぶれたり、こわれたりしやすい)果物や野菜は、今のところプラスティック製パッケージで販売することができるが、2026年6月末までの間に、段階的に廃止される。2023年6月末までにチェリートマト、インゲン、桃、2024年6月末までにエンダイブ、アスパラガス、マッシュルーム、一部のサラダ、ハーブ、チェリーのプラスティック包装が禁止される。2026年6月末までに、ラズベリー、ストロベリー、その他のデリケートなベリー類は、プラスティックを使用せずに販売しなければならない。
2022年からは、公共スペースではペットボトルの使用を減らすために水飲み場を設置する必要がある。広報用の出版物は、プラスティック包装無しで発送しなければならず、ファーストフード店ではプラスティック製おもちゃを無償提供できなくなる。2023年1月からは、ファストフード店で食事をする際、使い捨て食器を使用することが禁止される。

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世界のスーパーマーケットの野菜・果物売り場では、容器包装は一切なく、キロ単位で量り売りするところが多くなっています。コロナ前のここ数年で、私が渡航してスーパーを訪問した国は、そこまで多くありません。ベトナム・フィリピン・カンボジア・インドネシア・タイ・米国・スウェーデン・デンマーク・オランダ・イタリア・・・といったところでしょうか。その多くは、野菜や果物は「1キロいくら」で量り売りしていました。

今年7月31日、京都市に開店したスーパー、斗々屋(ととや)は、野菜や果物はもちろん、店内にある700種類以上の食料品、ほとんどすべてが量り売りです。ワインも量り売りと瓶売りの両方が準備されています。

でも「包装がないと野菜や果物はすぐ傷むのでは?」という人もいます。

ここ数年で世界的に注目を浴びているのが米国のApeel Sciencesです。彼らが開発した、植物由来の、味もにおいも色もないコーティング剤は、すでに米国やドイツの市場に出回っています。このスプレーを塗布すれば、野菜や果物の日持ちが2倍に延長するというものです。使い捨てプラ袋を使う必要もありません。

下記の動画では、バナナやりんごに、スプレーしたものと、スプレーしないものとで、日持ちがどう違うかを示しています。

ただ、Apeel Sciencesの技術を使えるところも現時点では限られていますので、次から述べる1から4にかけてが、野菜・果物の包装関連に関する私自身の見解です。

1、不要な使い捨てプラスティック袋はできる限り最小限の使用にとどめる

One Way(ワンウェイ)と言われる使い捨て、特に使用時間が極端に短いプラスティック袋は、できる限り最小限の使用にとどめるのがよいと考えます。

これは生鮮食品の話ではありませんが、あるテレビ番組で、ドイツ人の女性が、「ビルの1階にあるコンビニでペットボトル飲料を買って、そこでプラ袋に入れてもらい、上階にあるジムに持ってきてすぐ捨てる人がいる。ほんの数十秒か数分しか使わずに捨てるとは、資源の無駄としか思えない」と、怒りを含んだ表情と声色で主張していました。これはもっともだと考えます。

フランス人がデンマークのコペンハーゲンで始めた量り売りの店では、生鮮食品はすべて包装なしでした。

2、使いまわしできるプラ袋は、使用により食品の賞味期限が延長するなら活用する

使い捨てではなく、何度も使い回しできるプラ袋で、それを使用することによって野菜や果物の賞味期限が延長するのであれば、活用するのがよいと考えます。


たとえば、最近、全国で市販されてきているのが、家庭用の野菜保存袋です。「愛菜果(あいさいか)」という名前で販売されているものは、私も数年前から愛用しています。

1ヶ月ほど、市販の野菜保存袋に入れて青梗菜を保存したことがあります。保存袋に入れないものと比べて、根もとの水分が保持され、葉っぱが数枚黄色くなったものの、1ヶ月経ってもしっかり使うことができました。入れないものはミイラ化しており、使うことができませんでした。

3、プラも紙も資源であることには変わりないので、使用は最小限に抑える

ストローなどでは、プラスティックをやめて、紙に移行する動きがあります。また、袋も、プラから紙へ変更する企業もあります。私が青年海外協力隊で赴任したフィリピンでは、首都のメトロマニラのセブン-イレブンやシューマートなどのショッピングモールでは、2015年ごろから、プラスティック袋をやめて、紙袋に切り替えていました。でも、プラも紙も、どちらも資源であることに変わりはありません。ですから、どちらにしても、使用は最小限に抑えるのがよいと考えます。

たとえば輸送時の二酸化炭素排出を考えると、プラは「軽い」というメリットがあります。今までプラだったものをすべて紙に変えてしまうと、たちまち重量は重くなります。

4、新たに開発された包装材が資源やコストの削減につながるなら積極的に活用する

新たに開発された包装材が、資源やコストの削減につながるのであれば、それは積極的に活用していくのがよいと考えます。


先日、米国とイタリアが共同開発した、食品用の容器包装が、賞を受賞しました。そこで、今回は、この袋について報じられたイタリア語と英語の記事を翻訳してご紹介します。

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