補助金・助成金をほぼ使わず3年半で200店舗以上まで食事寄付店を増やした仕組みとは

ニュースレター「パル通信」278号では、飲食店を利用して食事をする人が、ほかの誰かのことを思いやって余分にお金を払う仕組みについて紹介します。
井出留美 2025.11.02
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ニュースレター「パル通信」278号では、飲食店利用者が、食事がじゅうぶんにとれない誰かのために、自分の分に加えて余分にお金を払い、その人が飲食できるようにする仕組みについてご紹介します。

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<お知らせ>

*フィットネスクラブのカーブスが令和7年度食品ロス削減推進大賞の環境大臣賞を受賞しました。2007年から長年続けてきたフードドライブ活動が評価されました。拙著『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書、2016)でも紹介しています。

*食品ロス対策アプリをデンマークのコペンハーゲンで始めたToo Good To Go(トゥーグッドトゥーゴー)は、2025年、日本支社を立ち上げました。2026年をメドに日本で事業を始めます

*消費者庁制作動画「日本の食品ロスの現状と対策」英語字幕もついて3分間です。

*J-WAVE、堀田茜さんの番組に11月1日14時から出演しました。次回は11月8日14時からです。

ENEOS FOR OUR EARTH
@FOROUREARTH_JFL
𝑬𝑵𝑬𝑶𝑺 𝑭𝑶𝑹 𝑶𝑼𝑹 𝑬𝑨𝑹𝑻𝑯 -𝑶𝑵𝑬 𝑩𝒀 𝑶𝑵𝑬-
✧✦𝑵𝑨𝑽𝑰𝑮𝑨𝑻𝑶𝑹✧𝑨𝑲𝑨𝑵𝑬 𝑯𝑶𝑻𝑻𝑨✦✧

今日14時からは…
食品ロスジャーナリストの井出留美さんと
実りの秋にこそ考えたい食品ロスの現状🍙
📻radiko.jp/share/?t=20251…
#blue813 #foe813 #jwave #SDGs #堀田茜
2025/11/01 09:51
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*『おやつのおぼうさん』(くもん出版)12月9日出版。印税の一部をおてらおやつクラブに寄付します。バリューブックスで注文いただくと、売り上げの2割がおてらおやつクラブの寄付になります。

*11月4日(火)午後、神戸大学でのシンポジウムで登壇します。参加費無料、一般大歓迎です。

*11月5日(水)午後、奈良県天理市の天理大学で講演します。

*11月12日(水)午後、東京都渋谷区で「食品寄贈を促すシステムづくりに求められるもの」について講演します。

*12月6日、東京都杉並区で講演します。杉並区にお住まいの方、在勤・在学の方が対象です。

*食品残さを堆肥にする、株式会社ウエルクリエイトのメリーズシステム、出村康子さんに教えていただきました。ありがとうございました!

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イタリアのカフェ・ソスペーゾ

エスプレッソを日常的に飲むイタリアでは、カフェで、自分の飲む分に加えて、誰かのためにもう1杯分支払う仕組みがあります。それが「カフェ・ソスペーゾ(Caffe Sospeso)」です。

英語では「Suspended Coffee (サスペンデッド・コーヒー)」、日本語では「保留コーヒー」と呼ばれます。会ったことのない人の分まで、2杯分のコーヒー代を払い、もう1杯は、それを必要とする人が来るまで留め置かれるから「保留」という表現が使われているようです。

初めて「カフェ・ソスペーゾ」を知ったのが、今から12年前、2013年のことでした。当時、広報をつとめていたフードバンク、セカンドハーベスト・ジャパンに書いています(参考情報1)(2)。

セカンドハーベスト・ジャパン公式サイト

セカンドハーベスト・ジャパン公式サイト

コロナ禍では、買い物がしづらくなり、また職を失い食べ物に困る人が多くなりました。そこでイタリアでは、エスプレッソならぬ、パンのソスペーゾ、美容院代を代わりに支払うなど、いろんな取り組みが生まれました(3)。

Il grande cuore di Napoli: il caffè sospeso

Il grande cuore di Napoli: il caffè sospeso

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神奈川県川崎市のイタリアンレストラン「トラットリア・レ・サルデ」

イタリアのシチリア州で働いていたシェフが開業したのが、神奈川県川崎市のレストラン「トラットリア・レ・サルデ」です(4)。シェフも、「カフェ・ソスペーゾ」の仕組みをご存知でした。

そこで、2013年ごろ、セカンドハーベスト・ジャパンに声がけをいただいて始めたのが、募金箱の設置です。募金箱に集まった金額の2倍をお店が足して食事券にし、慈善団体に食事券を寄付する・・というものです。たとえば5,000円の募金があれば、その2倍(10,000円)を店が足して15,000円にし、その金額分の食事券を支援団体などに寄付するというものです。

2013年、セカンドハーベスト・ジャパンのスタッフと一緒に、店を訪問しました。JR川崎駅から徒歩圏内にあるお店です。イタリアに住んでいたときにカフェ・ソスペーゾを知り、自分でも何かやりたいと思っていたそうです。

トラットリア・レ・サルデ公式サイト

トラットリア・レ・サルデ公式サイト

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日本にも続々と同様の取り組みがスタート

2013年3月27日に立ち上がった Facebookページ「Suspended Coffees」は52万人のフォロワーがいます(5)。

これを皮切りに、2016年ごろから、自分の飲食分にプラスして、誰かのためにお金を払う取り組みが生まれました。

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