食品業界(製造・卸・小売・外食)が共通して食品ロス削減に最も有効と考える取り組みとは?
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今日10月16日は、国連が定めた「世界食料デー」ですね。ここのところ毎週、講演が入っており、昨日15日は外資系企業で「消費者として食品ロスを減らすためにできること」についてハイブリッドでお話ししてきました。来週は中高一貫校で1,600名の方に、キャリア変遷も含めて講演します。
さて、ニュースレター「パル通信」275号では、食品業界(製造・卸・小売・外食)が、食べられるのに捨てられる食品ロスを削減するために、具体的にどのような取り組みが有効と考えているかについてお伝えします。食べられるものがリサイクルされる3つの事例についても共有します。
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<お知らせ>
*10月30日(木)、大手町駅そばで第9回食品ロス削減全国大会が開催され、14:20から16:00まで登壇します。参加費無料、予約不要です。ブース出展も多数あります。30日19時から第14回「パル通信」サポートメンバー限定交流会を会場からひと駅の茅場町駅近くで開催します。先日、18日までと募集したところ、現時点で参加者8名に達しましたので、早めで申し訳ないですが、募集を締め切ります。香川県、岡山県、東京都からのご参加、スーパー、食品メーカー、大学教員、外資系企業、家庭用生ごみ処理機メーカー、弁護士など、幅広い分野からのご参加、ありがとうございます!
*2025年10月21日まで、食品のパッケージ前面に栄養表示をする案について、政府がパブリックコメント募集中です。欧州でも議論されています→「日本版包装前面栄養表示ガイドライン」案に関する意見募集について
*三省堂発行、英語教員向け冊子「TEN」に寄稿しました。これまでのキャリア変遷や英語学習に関することなど、写真入りで1ページに書いています。インターネット上でお読みいただけます。冊子ご希望の方は、サポートメンバー限定で郵送しますのでお知らせください。
*『食べすぎる世界』(英治出版)10月10日出版、日本語版序文英治出版公式noteで公開。
*『おやつのおぼうさん』(くもん出版)12月9日出版。印税の一部をおてらおやつクラブに寄付します。バリューブックスで注文すると売り上げの2割がおてらおやつクラブの寄付になります。
*10月19日(日)10:30-、13:30ー、埼玉県川口市のキュポラで、出演映画『もったいないキッチン』が上映されます。鑑賞料500円。
*10月28日(火)19:30-21:00、オンラインで、LFCコンポストのたいら由以子さんと井出留美の対談「地域で生み出す小さな循環」。婦人之友社主催で、peatixでチケット販売中です。
*11月4日(火)午後、神戸大学でのシンポジウムで登壇します。参加費無料、一般大歓迎です。
*11月5日(水)午後、奈良県天理市の天理大学で講演します。
食品ロスとは、まだ食べられるのに、さまざまな理由で捨てられる食べ物を指します。
「食べ物を捨てる」と言っても、十分に食べられるものを捨てるのか、製造工程でやむなく出てしまう「不可食部」と言われるものを捨てるのかで、受ける印象は違います。
「もったいない」と思うのか、それとも「仕方がない」と思うのか。
令和の米騒動の裏で捨てられる米飯、1日3〜4トン
まず3つ事例をご紹介します。
1つめは、神奈川県相模原市にある日本フードエコロジーセンター(参考情報 1)で、毎日3〜4トン運び込まれる米飯です。豚の飼料へと加工されます。
食べ残しではなく、人がじゅうぶんに食べることのできる米飯が豚のエサになるのは、もったいない、と感じる人が多いのではないでしょうか。朝日新聞の取材を受け(2)、私は次のようにコメントしました。
「コメが不足している時になぜ貴重で有限な資源のコメの無駄な廃棄をやめないのか、すごく矛盾を感じる。コメを増やす方ばかりで、なぜ無駄を減らす方に意識がいかないのか」と言う。農水省の通知について、「食料は無限ではなく、限られているということを自覚して、事業者側は食品ロス削減に取り組んで欲しい。『やっている詐欺』にならないように、本気でやってほしい」
「農林水産省の通知」というのは、2025年6月13日に農林水産大臣名で出されたものです(3)。「賞味期限内食品はすべて消費者に」と書かれています。
ミートボールをバイオガスと低炭素肥料へ
では2番目の事例です。
オランダに本社があり、スウェーデン発祥の、世界最大の家具量販店、イケア(IKEA)。イケアは、これまでの7年間で、食品廃棄を約50%減らしました。併設しているレストランで、Winnow(ウィノウ)という計測機を導入したのです(4)。これにより、過去7年間で食品廃棄を約50%削減し、およそ8万3,000食分の食品ロスを削減することができました(5)。
このたび、イケアは、食品廃棄物を再生可能天然ガスへ転換する「バンガード・リニューアブルズ(Vanguard Renewables)」へ投資することを発表しました。
今回、米国にあるIKEA U.S.は、ウィスコンシン州やマサチューセッツ州など、全米5店舗のイケアで、レストランやフードマーケットで生じる、ミートボールなどの食べ残しや売れ残りを回収し、嫌気性消化でバイオガスと低炭素肥料へ再資源化する試験をはじめました。
イケアは、2030年までにすべての廃棄物を100%リサイクルする目標を立てています。
この場合、食べられるミートボールが肥料やバイオガスになることについてはどう感じるでしょうか。食べ残しはリサイクルしか仕方がないにしても、人がじゅうぶんに食べることのできるものについては人が食べてほしいと私は考えます。
リンゴの25〜30%に相当する皮・芯・果肉・種子の残さをミートボールに
3つめの事例です。
米国で、リンゴの栽培シーズンに約100億ポンド(500万トン)のリンゴが生産されます。その大半は小売店や直売所へ運ばれ、約35%はジャムやゼリー、サイダー、酢などの加工施設へ送られます。ただ、依然として収穫されたリンゴの25〜30%にあたる皮・芯・果肉・種子が残ってしまいます。
たいていは、家畜飼料や堆肥にされたり、埋め立てられたりしています。
そこで、食品科学者のピーター・グレイシー(Peter Gracy)(6)は、コーネル大学の研究者エラド・タコ(Elad Tako)(7)と共同で、リンゴの残さをフリーズドライし、均一な粉末に粉砕、完成した搾りかすを、ひき肉に20%混ぜてミートボールを作り、100%ひき肉で作ったミートボールと、20%リンゴ残さを混ぜたミートボールを100名以上に食べ比べてもらいました。その結果、100%ひき肉のものと、統計的に有意な差はない、という結果になったのです(8)。
このリンゴの残さの活用についてはどう感じるでしょうか?
これまで捨てていた分が活用されると同時に、ひき肉にリンゴの搾りかすを入れることで、食物繊維やビタミン・ミネラルなどの微量栄養素、ポリフェノール、ペクチンなどの含有量がすべて増加しました。
では、日本で食品廃棄物の調査をした結果と、これら廃棄物のうち、食べられる部分の廃棄の削減について、食品業界(製造業・卸・小売・外食)が、具体的にどのような取り組みが有効だと考えているかについて見てみましょう。
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