岐阜のうまいもの パル通信(92)
先日、朝日新聞に、松本隆さんのこんな言葉が書かれていました。
なんの拍子だったか、作詞家になった頃にこう思った。一生に食事をする回数は限られている、まずいものを食べてしまうと、その一食、損をする、なるだけおいしいものを食べた方がいい。それがぼくの基本になった。
「なるだけおいしいものを食べた方がいい」に共感します。ごくシンプルなものを「おいしく」食べるのは幸せですね。
2023年2月10日、岐阜県で講演に呼んでいただきました。その前の日程では長野県に滞在し、いったん帰ってきてから岐阜に向かいました。岐阜市滞在中に伺った、おいしくて、気持ちがなごんだお店をご紹介します。

岐阜市、川原町の街並み。赤いポストのある店は「川原茶屋」(筆者撮影)
この通り沿いにあるのが、食堂「こより」。行く前に、スマホのマップで調べて「ああ、宿からすぐ近くにあるな」と確認していました。現地に着いて、講演が終わってから改めて調べてみると、「いつも予約でいっぱいの店」とのこと。30分前に、だめもとで電話してみたら「大丈夫ですよ」とのこと。すぐに予約しました。

夜もまた、風情があります。食堂こより(筆者撮影)
お店の外に、「今日の一品料理」のメニューが掲げられています。

食堂こより「本日の一品料理」(筆者撮影)
店内は、入ってすぐの右と左にカウンターがあり、奥に4つテーブルがあります。

ボケててすみません・・・食堂こよりの店内(筆者撮影)
まずはビールを。せっかく岐阜に来たので、岐阜のクラフトビールを注文しました。ビールが飲める醸造所、Tap Room YOROCA(よろか)で作っているビールです。4種類あって、この日は「金華山エール」(ほかに「夕日のIPA」「やながせホワイト」「鵜飼レッドエール」)。

食堂こより、岐阜のクラフトビール「金華山エール」とお通し(筆者撮影)
最初に出てきたのが、「鈴鹿の菜花と帆立 黄身酢がけ」。お通しと同じく、これにもジュレが使われています。ジュレって、イタリアンやフレンチだけかと思ったら、和食にもこうやって使えるんですね。ジュレのおかげで、素材がするすると、喉ごしよく食べやすく、貝割れのシャキシャキ感、菜花と帆立の噛みごたえと相まって、ビールがゴクゴク進む一品です。ガラスの器も美しく。

スマホの写真でごめんなさい...食堂こより、鈴鹿の菜花と帆立 黄身酢がけ(筆者撮影)
ありがたかったのが、最初に「メニューの料理は2人分ですが、全部1人分にしますか」と聞いてくださったこと。いろいろ食べたいから、全部1人分の分量にしてもらいました。
カウンターで女性の店員さんが薦めてくれた「信長しいたけのステーキ」。肉厚の信長しいたけ、軸の部分までしっかり使っています。だしが、いい香りと、ほどよい甘辛さで、思わずご飯にかけたくなるほど。
そして、「菊芋チップス」。揚げたて!ふだん揚げ物はほとんど食べないのですが、揚げたては、ホクホクさが味わえて、ああ、アツアツで味わえるように揚げてすぐ提供してくださったんだ、という作り手の気持ちが伝わってきて、幸せになります。

左上が「菊芋チップス」左下が「信長しいたけのステーキ」、右が「鈴鹿の菜花と帆立 黄身酢がけ」(筆者撮影)
ビールだけでは足りなくなり、「長良川梅酒」のソーダ割りを注文。
「信長しいたけ」の だし があまりにおいしかったので、店主の杉山耕平さんに「飲み干したいくらい」と言ったら、「じゃあ、このだしに野菜を入れてきましょう」と言って、すぐに作ってくださいました。
大根の細切りに、玉ねぎ、トマトを、だしに浸したもの。もう、それだけで充分。スプーンがついていたので、だしを飲み干してしまいました。

しいたけの煮物のだしに、特別に生野菜を入れてくださいました(筆者撮影)
「太ごぼうの唐揚げ」も頼みました。山椒の香りに惹かれて、思わず、顔を皿に何度も近づけて、香りを楽しみました。(写真がボケててごめんなさい)

太ごぼうの唐揚げ(筆者撮影)
これだけ食べると、さすがにもうデザートは入らない。
でも、せっかくなので、持ち帰りできますか、と聞いたら、快くOKしてくれました。ホテルに泊まっていることを伝えたところ、スプーンとフォークもつけてくださいました。
抹茶のシフォンケーキと、メニューには書いていなかった、甘酒のプリン。

持ち帰りを快くOKしてくださいました。抹茶のシフォンケーキと甘酒のプリン(筆者撮影)
締めて4,850円。こんなにたくさん食べて、アルコール2杯も飲んで4,000円台。
料理を出してくださる方が、きちんと説明してくださるし、熱いものは熱く、冷たいものは冷たく出してくれるのがうれしい。
翌日もランチで行こうと思ったら、すでに予約で満席でした...
旅館の方が薦めてくださった、川原町屋(かわらまちや)に入りました。

川原町屋の店内(筆者撮影)
ランチメニューの一番上に書いてあったお粥を頼みました。お粥って聞くと、味がなさそうだけど、これはしっかり味がついています。

川原町屋のお粥(筆者撮影)
入り口入ってすぐのスペースで、雑貨や小物が売られています。そこをまっすぐ進んでいくと中庭があり、中庭を抜けると、奥に喫茶スペースがあります。
マレーシアのマラッカを旅したときも、こんなふうに、中庭のあるお店がありました。中庭のある空間に憧れます。

喫茶スペースから入り口方面をみたところ(筆者撮影)

入り口から進んできて喫茶スペースを見たところ(筆者撮影)
川原町の道沿いにある十六銀行のATMと看板も風流な感じ。

十六銀行の看板(筆者撮影)
今回泊まったのは、創業160年を超える、長良川温泉 十八楼(じゅうはちろう)です。

長良川温泉十八楼(筆者撮影)
ここの従業員の方々は、みなさん、サービスがごく自然で、心地よい宿でした。初日は雨でしたが、タクシーから降りるとすぐ傘をかざしてくれました。ランチのお薦めのところを尋ねると、地図を示しながらすぐに教えてくれて、いろんな気配りが、押し付けがましくなく、ほどよい感じ。ロビーも飲み物自由、好きな場所で過ごさせてもらいました。

十八楼ロビーのカウンター(筆者撮影)
部屋からは、長良川がよく見渡せました。

長良川(筆者撮影)
十八楼から、長野県の義父母にお土産を送ったところ、なんと、義父は、30年以上前に、この宿に泊まったとのことでした。
十八楼のすぐ近くに「食堂こより」と「川原町屋」があります。滞在中には気づかなかったのですが、帰ってきてから調べたところ、「食堂こより」は、岐阜県で高評価の飲食店ランキングで1位を獲得していました。
おいしく、味わって、感謝して食べること。それは、食べ物を大切にすること、食べ物を捨てないことにもつながりますね。
今日の書籍
『アッテンボロー 生命・地球・未来 私の目撃証言と持続可能な世界へのヴィジョン』(東洋経済新報社)
英国の通信社BBCで、長年、自然史ドキュメンタリーを手がけてきた、デイヴィッド・アッテンボロー氏の著書です。94歳のアッテンボロー氏が見てきた地球の変遷と、持続可能な社会にするためのヴィジョンとは何か、カラー写真と、彼が若かりし頃の白黒写真をふんだんにまじえており、彼の集大成の本です。巻末には用語集や参考情報もついており、買って損のない本です。来月3月、信濃毎日新聞に書評が掲載される予定です。
今日の映画
『ベルファスト』
俳優・監督・演出家のケネス・ブラナーが描いた自伝的作品。自分が幼少期を過ごした北アイルランドのベルファストが舞台であり、タイトルも「ベルファスト」。ケネル・ブラナーが監督だけでなく、製作と脚本もつとめています。
第46回トロント国際映画祭で、観客賞(最高賞)受賞。
第27回放送映画批評界協会賞で、最多11部門ノミネート。
第79回ゴールデングローブ賞で、脚本賞を受賞。
第94回アカデミー賞ノミネート発表では、作品賞、監督賞、助演女優賞、助演男優賞、脚本賞、主題歌賞、音響賞の7部門でノミネートされ、ケネス・ブラナー監督がオスカーを受賞しました。また、2023年2月に発表されたキネマ旬報のベスト10では、外国映画部門で第七位に入賞しています。
平和だった北アイルランドで起きた紛争を描いており、今もロシアによるウクライナ侵攻が続いている問題や、トルコとシリアの地震のように、突然故郷が失われた悲しみを、あらためて考えさせられます。
編集後記
岐阜の講演の前に、義父母のいる長野県東御市へ行ってきました。帰ってきてから、昨日お会いした方に、「職人館(しょくにんかん)知ってますか」と聞かれました。どうやら、義父母宅にほど近いところにある、おいしい蕎麦屋さんらしいです。次回行ってきます!
そして、パンと日用雑貨で知られる株式会社わざわざが、東御市に3つめのお店をオープンしました。「わざマート」。先日訪問し、10点ほど食料品を買ってみました。セレクションが、ちょっと表参道っぽい?地方の田んぼに囲まれたリアル店舗にしては、なかなかの高級志向のように感じました。
わざわざのメールマガジンはお薦めです。こんなふうに書くと商品が魅力的に映るんだなという学びが得られます。

化粧品類が続々と入荷し、皆さまにご使用感をお試しいただけるようテスターも準備いたしました。ぜひ使い心地やお色味をお試しください💄
本日もご来店お待ちしております🍞
2月は28日なので、ちょうど半分まで来ましたね。
残り半分、充実した日々をお過ごしください!
2023年2月14日
井出留美
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