捨てていたのは資源だった!こんなにある、バナナの皮の活用法 パル通信(18)

今までの経済モデルは作って売って消費して捨てるという一方通行のモデル(リニアエコノミー)でした。これからは、捨てていたものを資源として活用する循環型の経済モデル(サーキュラーエコノミー)です。具体的にどのような事例があるのでしょうか。
井出留美 2021.11.18
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ここのところ、連日、食品ロスやSDGs、サーキュラーフードといった内容で、取材を受けることが続いています。サーキュラーエコノミー(循環経済)は、今まで捨てていたものを資源として活用していく経済モデルです。昨日の編集の方は「捨てていたものを活用するって言われても、具体的にどうすればいいのかわからない」とおっしゃっていました。具体的な例としては「生ごみ」を資源として活用する事例が挙げられますが、今回は、その中でも「捨てるのが当たり前」の「バナナの皮」を取り上げます。調べてみたら、バナナの皮の活用方法は山のようにありました。

バナナは世界で約1500億本が流通するうち、その半分にあたる750億本が廃棄されていると、Barnana社の創業者であるMatt Cliford(マット・クリフォード)氏はTEDで語っています。バナナは熟すとシュガースポット(茶色い斑点)が出てきます。これは、甘みや香り、栄養価が増した証拠なのですが、見栄えがよくないという理由で、値引きされてもあまり買われなかったりして、捨てられることが多いのです。

今回の記事では、バナナに関する世界のデータを示し、次にバナナの皮の活用法についてお伝えします。実際に活用するしないはあなた次第ですが、「当たり前と思っていたことが、実は当たり前じゃなかった」というように、固定観念や先入観をこわすことは、仕事の上でも暮らしの中でも大切かもしれません。そうでないと、新しい生活様式に転換していけないからです。

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バナナの年間消費量

昔は高級品だったバナナですが、今ではおなじみの果物となりました。2004年以降、果物の中では、日本の年間消費量1位です(アジア太平洋資料センター:PARC『甘いバナナの苦い現実』資料集より)。総務省統計局「家計調査」では、世帯ごとの購入数量も安定して高くなっています。

国連FAO(食糧農業機関)の統計によると、2018年、世界における一人あたりのバナナ消費量は年間11.6kgでした。1961年当時は年間5kg程度でしたから、2倍以上増えたことになります。

では、日本はどれくらい食べているでしょうか。2018年の一人当たりのバナナ消費量は、日本が6.6kgでした。平均11.6kgに比べると少ないですね。中国は7.3kg、ドイツ11.6kg、米国11.8kgです。

「バナナ大学」は、バナナのさまざまな分野の情報が詰まっているサイトです。

バナナの廃棄量

冒頭で述べた通り、バナナは世界で約1500億本が流通するうち、その半分にあたる750億本が廃棄されていると、Barnana社の創業者、Matt Cliford(マット・クリフォード)氏はTEDで語っています。

バナナ関連の本といえば、知る人ぞ知る、鶴見義行氏の『バナナと日本人』(岩波書店)があります。61刷以上を重ねている名著です。ここには、1970年代にも、日本向けの輸出用バナナがフィリピンで大量に捨てられていたことが書かれています。

私は青年海外協力隊(現JICA海外協力隊)でフィリピンに住んでいました。日本に輸出されるバナナは、フィリピン国内で広く食べられているバナナではありません。皮が分厚い品種のものです。フィリピンの人たちが「おいしい」と言ってフィリピンで食べているバナナは、皮が非常に薄く、輸出に適さないからです。

バナナペーパーは捨てられるバナナの茎から作られる

私は、バナナペーパーを名刺に使っています。一般の紙は、一般的な木材から作られ、それらの木が育つには数年以上かかります。バナナは一年で育ち、茎は廃棄されます。ですから、その茎を使ってバナナペーパーが作られているのです。

スウェーデン取材でもお世話になった、ワンプラネット・カフェのエクベリ聡子さんとペオ・エクベリさんがアフリカで10年がかりで取り組み、試行錯誤の末、今では現地の雇用も生み出しています。

バナナの皮の活用法を調べると、一味変わったものもありました。10個ご紹介します。最初に、FAOの親善大使を務めている、日本ホテルの中村勝宏総料理長が作られた「もったいない」を活かした料理をご紹介します。

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