2024年11月に最も読まれた記事 なぜ韓国は生ごみリサイクル率を2.6%から98%まで上げられたのか
こんにちは。ニュースレター「パル通信」にご登録いただき、ありがとうございます。今号216号では、2024年11月に配信した記事のうち、最も読まれたものを含むすべての記事のエッセンスをお届けします。
「今月に最も読まれた記事」は、いつも月末に配信していますが、11月末と12月初めのお知らせがありますので、すこし早めにお送りします。私が相談役(広報アドバイザー)をつとめている、認定NPO法人おてらおやつクラブのイベントです。以下でご紹介する3つのイベント、すべての会場に私も参ります。10月末に出版した拙著『おてらおやつクラブ物語』(旬報社)の販売とサイン会もあります。
11月30日の奈良・東大寺のイベントでは大仏ツアー、12月4日の東京・築地本願寺では見学会があります。年末年始はお寺も混雑します。いまのうちに拝観するのはいかがでしょうか。東大寺の近くには老舗の釜飯店「志津香(しづか)」が、築地本願寺にはカフェがあります。会場お近くの方はもちろん、遠方からご参加いただける方も、期日までにお申し込みの上、ぜひお越しください!
最近、ニュースレター「パル通信」に新たにご登録いただいた方、誠にありがとうございます。「パル通信」では、毎号、記事の後ろに「今日の書籍」と「今日の映画」コーナーで、本や映画をご紹介しています。本や映画は、最新のものだけでなく、古い時代のものも取り上げています。このコーナーを読んでくださった読者の方が、実際に映画館へ行ったり、懐かしのDVDを思い出してお知らせくださったり、「買いたい書籍リスト」を作ってくださったりしています。今回の216号でも、「今日の書籍」と「今日の映画」をご紹介しています。
なぜ韓国は生ごみリサイクル率を2.6%から98%まで上げられたのか、韓国有識者による講演
2024年11月に最も読まれたのは、韓国の生ごみリサイクル率上昇の記事でした。
11月初めに行った京都では、同志社大学でゼロ・ウェイストシンポジウムが開催され、ゼロ・ウェイストの活動を40年以上おこなっているポール・コネット博士や有識者の方々の講演をお聴きしました。
韓国からは、ムン・ドウン氏が講演し、韓国で生ごみリサイクル率を驚異的に上げられた背景について解説されました。この記事は、同志社大学の原田禎夫先生が参加者に共有してくださったおかげで、12名もの方が新規にご登録くださいました。原田先生、ありがとうございました!
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出された料理をこんなに食べ残す?生ごみリサイクル率98%の韓国を訪問して
京都の同志社大学でゼロ・ウェイストシンポジウムに参加したあと、ポール・コネット博士や、イタリア在住のゼロ・ウェイスト活動家、佐藤友啓(ともひろ)さんらと韓国へ渡航しました。ポール・コネット博士は韓国のソウルとスンチャンでも講演なさいました。メディアも多数来て、反響も大きかったです。
韓国で出された、いわゆるおもてなし料理ですが、ああ、こんなに食べ残すんだ・・・というのが衝撃でした。
以前、中国は「食べきれないほど料理を出すのがおもてなし」「客は食べ残すのがマナー」と言われてきました。
が、そんな中国では、2013年に光盤運動(食べ切り運動)が起こり、2020年には食品廃棄を禁ずる法律が施行されており、状況がすこしずつ変わってきています。日本在住で知人の中国人医師に聞いたところ、ホテルでも「地球を守るために食べ残しをなくしましょう」というPOPがテーブルに設置されるなど、以前との違いを感じるとのことでした。
韓国では、生ごみを燃やさず、埋め立てず、資源としてリサイクルする割合が98%にものぼっています。しかし、環境配慮の3Rの原則では、リサイクルよりリユース(再利用)が優先順位が高く、それより高いのがリデュース(廃棄物の発生抑制)です。つまり、料理は、食べ残しをリサイクルする以前に、適量出して適量食べ切るのが最も理想的なはずです。この記事では、実際に、韓国の飲食店で食べ残した現場の写真を載せています。
世界初!世代別の食品ロスと温室効果ガス排出量を解明し国際誌に掲載
立命館大学、長崎大学、東京大学、九州大学の4大学の研究者が、世代別の食品ロス排出量と温室効果ガス排出量を世界で初めて明らかにし、論文が国際ジャーナルに掲載されました。
「食品ロス」は大きく事業系と家庭系に分かれますが、今回の研究者らが対象としたのは家庭系の食品ロスです。「パル通信」読者の方からは、わかりやすく解説してもらってありがたいとのコメントをいただきました。
数千ドル節約?カフェ産業世界最大のオーストラリアで大学が「食品ロス削減アクションプラン」
人口一人当たりのカフェが世界最大であるオーストラリアで、2024年10月、大学と団体から「カフェ食品ロス削減アクションプラン」が発表されました。この内容について、記事で解説しました。
オーストラリアは、ヨーロッパ以外の国で人口一人当たりのカフェ産業が世界最大で、ホスピタリティ産業(いわゆるサービス産業)から出る食品の廃棄が全体の16%以上を占めています。発表されたプランで示された具体的な対策は、カフェのみならず、飲食業界全体で役に立つものだと思います。
今日の書籍
今日ご紹介する本は、ベストセラー『土と内臓』の著者の新作です。2024年8月に出版され、2024年10月5日付の日本経済新聞と毎日新聞の、それぞれ書評欄で紹介されました。
私が最も印象に残った記述は「味は皮にあるのだ」という言葉です。オハイオ州立大学の研究者が、ジャガイモで実験したというくだりにありました。くし切りに切ったジャガイモでフライドポテトを食べ比べてもらうのですが、そのジャガイモが、有機栽培のものか、(従来の)慣行栽培のものかをあててもらうという実験です。
ジャガイモの皮がついていると、被験者は、有機栽培と慣行栽培の違いを認識することができたそうです。ですが、皮がついていないと、違いがまったくわからなかったとのこと。
つまり「味は皮にある」のです。有機栽培で育てたジャガイモは、カリウム、マグネシウム、硫黄、リン、銅などを含んでおり、ファイトケミカルやソラニジンの量に関しては、慣行栽培のものの2倍含んでいたそうです。
参考文献に関しては、あまりに多い、ということで、巻末にQRコードでリストを表示していました。実際にアクセスしてみたところ、本当にたくさんありました。QRコードでインターネット上に誘導するやり方も、最近の書籍の特徴だと感じました。分厚い本ですが、食や農業の仕事をしている方におすすめします。
今日の映画
監督:ロバート・ケナー、メリッサ・ロブレド
出演:マイケル・ポーラン、エリック・シュローサーほか
2024年12月6日(金)より、東京・新宿シネマカリテほか、全国で順次公開されるドキュメンタリー映画です(配給会社:アンプラグド)。前作の『フード・インク』は第82回アカデミー賞にノミネートされ、第32回エミー賞を受賞するなど、米国では24週間のロングランを達成し、大ヒットしました。日本でも2011年に公開されました。
この映画は、食に関わる仕事をする人は必見です。もちろん、「食」は誰にも関わる問題ですので、どなたにも観ていただきたい映画です。
印象的なシーンはいくつもありますが、ふだんの食生活に知らぬ間に入り込んでいるUPF(Ultra Processed Foods:超加工食品)は、子どもや若い人の食生活に関わる人にはできる限り早く知っていただきたい問題です。
映画に登場する専門家は「UPFは脳や体の代謝機能をさまたげる」と発言しています。米国人は全エネルギー摂取量のうち、半分以上をUPFから摂取しており、アフリカ系米国人の子どもの糖尿病の罹患が、ここ10年で2倍に増えている、という衝撃の事実が明かされます。
また、政治と大企業の癒着の問題も知る必要があります。健康上、危険性があるとわかっていながら食品の製造や販売を続ける大企業。コロナ禍では、食肉加工業者が操業停止されないよう、ホワイトハウスに働きかけ、当時のトランプ大統領がそれに応えるということも起こりました。そのため、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれた多くの移民労働者が命を落としたり健康被害にあったりしたのです。その一方で、大手食肉加工業者は売り上げ250%増と、莫大な利益を築きました。
先日、山形出張の期間、ロバート・ケナー監督にインタビューする機会をいただきました。監督は、「日本ではUPFの摂取割合は40%」とおっしゃっていました。そんなに多いかな?と思ったのですが、人によってはそのくらいの割合を摂っているかもしれません。
映画にまつわる記事は、連載コラムを書いている朝日新聞SDGsACTION!で、来月12月に公開される予定です。
20204年12月6日(金)に公開される映画『フード・インク ポスト・コロナ』ぜひご覧ください!
編集後記
今月11月は、京都・韓国・福岡・山形と、出張が続きました(このあと、長野県上田市と奈良へ)。しかも、書籍の初稿提出が11月30日。12月に再校を提出する予定です。山形滞在中に出羽三山神社へ行ったら、雨あがりの石畳で尻もちをついて尾てい骨を傷めてしまい、今、とても痛いです....
今日はこのあと、東京都内のホテルで200名の方々に「地産地消と食品ロス削減」をテーマにした基調講演とパネルディスカッションをおこなう予定です。
昨年にも「食品ロス削減」で同じホテルからご依頼いただきました。講演後、都内のホテルで食品ロス削減のための機械を導入したり、他のホテルの事例を取り入れたりするなど、きちんと実践につなげてくださったこと、そしてそれをご報告くださったことがとてもうれしく感じられました。
講演のあとには、相談役(広報アドバイザー)をつとめている「おてらおやつクラブ」のイベントプレスリリースを持って、霞ヶ関の記者クラブまで行く予定です。冒頭にもお伝えしました、おてらおやつクラブのイベント、ご登録とご参加をお待ちしておりますね!
12月には、山形で味わったおいしいものもご紹介したいと思っています。どうぞお楽しみに。
2024年11月27日
井出留美
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