ミシュラン星付き名店で修業したソムリエの店「洋食イデルミ」1日1組限定

ニュースレター「パル通信」224号では、ミシュランの星付き名店で修業したソムリエが営む1日1組限定の店「洋食イデルミ」訪問記をお伝えします。
井出留美 2025.01.15
誰でも

ニュースレター「パル通信」にご登録いただき、ありがとうございます。パル通信224号では、ミシュランの星付き名店で修行したソムリエ、三浦修平さんが営む「洋食イデルミ」in大阪 を訪問したので、お料理とともにご紹介します。夜は1日1組限定のお店です。

2024年12月、私と同じ名前の店があると聞き、奈良女子大学「専門職論」の講義を終えて、初めて行ってきました。

年が明けた2025年、今回は1月14日、第11回「パル通信」サポートメンバー限定交流会in大阪、と銘打って、7名で予約しました。

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「洋食イデルミ」の由来

なぜ「イデルミ」という名前になったのか。私が取材して書いた、京都の100食限定の国産牛ステーキ丼の店「佰食屋(ひゃくしょくや)」の記事がきっかけだそうです。佰食屋はメニューと提供数を絞り、飲食店にもかかわらず、冷凍庫を置かず、食品ロスを出さない飲食店です。

洋食イデルミの看板(大牟田聡さん撮影)

洋食イデルミの看板(大牟田聡さん撮影)

私が100食限定の「佰食屋」を知ったのは、京都市の取材の時でした。2016年ごろ、食品ロスをテーマに京都市を取材していたとき、当時の職員の方から紹介されました。コロナ前の2017年から2019年まで、何度も佰食屋へ行き、取材記事を書きました(1〜5)。

「洋食イデルミ」(6)のオーナーシェフは、ソムリエ資格を持ち、長くイタリアンで働き、京都の星付き名店の日本料理店で修業してきた三浦修平さん(7)。ご出身は山口県で、ご実家は食品製造業、三浦製麺を営んでおられます(8)。

ソムリエ資格を持つ三浦修平さん(大牟田聡さん)

ソムリエ資格を持つ三浦修平さん(大牟田聡さん)

「洋食イデルミ」は、長らく人気を博してきた洋食店「ファミリーHAMA(ハマ)」(9)の跡地にオープンしました。ファミリーハマのシェフがご高齢のため閉店し、そのあとに2024年7月、三浦さんが居抜きで入られたそうです。

三浦さんの店はキッチンスペースが限られており、ロスを出さない店なので、一緒に働いていたスタッフが「佰食屋みたいですね」と。それもあって、佰食屋の記事を書いた私の名前を店名につけてくださったそうです。どちらかというと、意味というより、音の響きからとったとのこと。「イデルミ」は、なんだか昭和レトロな店みたいな感じで...

洋食イデルミの外観(筆者撮影)

洋食イデルミの外観(筆者撮影)

三浦さんは、お客さんに「イデルミさんに許可とったんですか?」と聞かれるたび、許可をとってないと話していたので、前回、私が連絡してきて「十中八九、怒られると思っていました」とのこと。(怒るどころか、名前を使ってもらって光栄です✨)

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1品目:白味噌のお雑煮

「洋食イデルミ」は、事前にお客の好みや苦手な食材などを聞いていただいた上で、それに対応したお料理を出してくださいます。いつも市場で旬の食材を買い出しされており、お料理はどれも絶品です。

今回の1品目は、白味噌のお雑煮。普段使う昆布の2倍量を使って、出汁をひき、白味噌仕立てで仕上げていただいた一品です。

白味噌のお雑煮(大牟田聡さん撮影)

白味噌のお雑煮(大牟田聡さん撮影)

参加者のお一人、発酵がお好きな出村さんから、「どんな白味噌を使っているんですか?」とご質問があり、三浦さんが見せてくれたのがこちら。大正三年創業、一久(かずひさ)味噌醸造株式会社(10)の「ぞうに味噌」(11)です。お雑煮は、甘みがあって、香りがよい一品でした。

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2品目:連子鯛(レンコダイ)のムニエル

2品目は、連子鯛(レンコダイ)という鯛のムニエルでした。ふわっとした食感の身の魚で、そこに市場で仕入れたカブや青菜、生姜のドレッシングでさわやかに仕上げた一品です。

こちらは参加者のお一人、大阪毎日放送(MBS)の大牟田聡さんお気に入り。私も「レンコダイ」は初めて食べました。分量もちょうどよく、さわやかな香りと風味が味わえる一品でした。

連子鯛(レンコダイ)のムニエル(大牟田聡さん撮影)

連子鯛(レンコダイ)のムニエル(大牟田聡さん撮影)

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3品目:白子とコラトゥーラのパスタ

3品目は、タラの白子と、コラトゥーラのパスタです。

白子とコラトゥーラのパスタ(大牟田聡さん撮影)

白子とコラトゥーラのパスタ(大牟田聡さん撮影)

コラトゥーラって何?と思ったら、イタリアの魚醤だそうです(13)。カタクチイワシを発酵させて作られています。白子は新鮮でトロリとした食感。パスタに魚醤?と思ったけど、意外にマッチしていました。白子の食感は大好き。洋食イデルミのコースは、一品ずつが適量なので、うれしいです。

別件ですが、尿酸値の関係で白子などの魚卵の摂取を制限されている方には、相模屋食品が製造している「白子のようなビヨンドとうふ」という商品があります(14)。

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4品目:チキンステーキのアレッタ添え

4品目はチキンステーキ。アレッタと呼ばれる野菜のソテーが添えられています。「アレッタ」とは、ブロッコリーの変種とケールの変種を掛け合わせてつくられた野菜だそうです。存在感のある青菜で、噛みごたえがあっておいしい野菜でした。鶏肉は、三浦さんいわく、煮込みにしようか迷ったそうですが、皮のサックリ感と中のジューシーさが感じられるように焼いて提供してくださいました。

チキンステーキ、アレッタ添え(大牟田聡さん撮影)

チキンステーキ、アレッタ添え(大牟田聡さん撮影)

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5品目:キーマカレー

5品も!三浦さんが、お米をといで炊いたごはんで、キーマカレーを出してくださいました。なんでも、「インド人に教わったカレー」だそうです(笑)お肉は牛肉ではなく豚肉、ほかにトマトなどの野菜が使われたキーマカレーです。

キーマカレー(大牟田聡さん撮影)

キーマカレー(大牟田聡さん撮影)

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6品目:ミルフィーユ

なんと6品目まで!

普段はデザートを出していないそうですが、特別に、実験段階だというミルフィーユを出してくださいました。カカオと焼いた苦味が感じられ、その苦味が甘くてふわっとしたクリームとあいまって、舌に心地よく残る味でした。

ミルフィーユ(大牟田聡さん撮影)

ミルフィーユ(大牟田聡さん撮影)

これに、ドリンクをプラスして、気になるお値段は・・・・8,000円!お酒が飲めない方はウーロン茶を1杯飲んでいらっしゃいましたが、その方々は8,000円ぐらいでした(私はビールもスパークリングワインも飲んだので9,900円)。

洋食イデルミは、ディナーは完全予約制、1日1組限定です。一方、ランチは誰でも入れます。たとえば具沢山の味噌汁にチキンステーキ、あるいは具沢山のハンバーグステーキなどで1,300円とリーズナブル(大牟田聡さん談)。女性客にも大人気だそう(三浦さん談)。

いまは、他の店の経営もあって、夜に予約していただいたお客様のみ対応していらっしゃるそうです。ぜひ行ってみてください。

ちなみに2024年12月に行ったときには「雲丹と人参のムース」「本日のお魚(鯛)のムニエルとお魚の出汁で炊いたリゾット」「うすなが牛のロースト ビーツのソースと色々なお野菜の温かいサラダ」の3品でした。こちらもおいしかったですよ。

今回参加してくださった6名+イデルミで、三浦修平さんが自撮りしてくださいました。

手前が三浦修平さん。右から大牟田聡さん、岡田真一さん、安田里美さん、イデルミ、出村康子さん、澤田政明さん、竹本万里子さん(三浦修平さん撮影)

手前が三浦修平さん。右から大牟田聡さん、岡田真一さん、安田里美さん、イデルミ、出村康子さん、澤田政明さん、竹本万里子さん(三浦修平さん撮影)

カウンターでも撮影。

洋食イデルミのカウンターで(三浦修平さん撮影)

洋食イデルミのカウンターで(三浦修平さん撮影)

お店の名刺は、活版印刷でイデルミのロゴを印刷しています。また、お箸もこだわりのものです。

2024年12月に出していただいたお料理「ウニとにんじんのムース」と「イデルミ」のロゴが入った紙つきの箸(筆者撮影)

2024年12月に出していただいたお料理「ウニとにんじんのムース」と「イデルミ」のロゴが入った紙つきの箸(筆者撮影)

洋食イデルミ、ぜひ、予約して行ってみてくださいね。

洋食イデルミ

ソムリエの資格を持つ店主がお客様のためだけのコースをご用意。帝国ホテルから徒歩5分LUNCH11:30〜14:00

DINNER18:00〜21:00

BAR21:00〜24:00(予約制)

大阪府大阪市北区松ヶ枝町 1の43

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参考情報

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今日の書籍

1953年、イタリアの農家に生まれたブルネロ・クチネリ。1978年、カシミヤを染める小さな会社「ブルネロ・クチネリ社」を立ち上げました。「人間の尊厳を守る労働」という理想を掲げ、1982年には、イタリアの小さな村、ソロメオへ会社を移します。1985年には、廃墟となっていた村の古城を買い取り、本社にしました。2000年には、村の古い工場を買い取り、改修して生産体制を整えました。

今では世界的なブランドとなったクチネリ社ですが、ブルネロ・クチネリは、ソロメオの村を修復し、劇場や図書館、公園などを整備するなど、単なる儲け主義ではない経営を続けています。

一番印象的だったのは、著者である彼の次の言葉です。

「欲を張らず適量で満足するという考えが私は大好きです」

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今日の映画

監督・編集:山崎エマ

東京都世田谷区立小学校に通う、小学校1年生と6年生の学校生活を、一年にわたって追い続けたドキュメンタリー映画です。

私は亡父の転勤で小学校3つ通いまして(東京・埼玉・愛知)、1つめの学校が東京都世田谷区立小学校でした!この映画で出てくる小学校からは車で30分ぐらいの距離で離れていますが、自分が通った頃を思い出しながら観ていました。

教育大国フィンランドでは20館の映画館で公開されており、大ヒットを記録しているそうです。先日、監督の山崎エマさんがJ-Waveで語っていたのは、この映画を海外の人が観ると「ああ、だからサッカーの大会で、日本人は(誰に言われなくても)ごみ拾いをするんですね」と言われたりするそうです。

山崎さんは大阪で育ち、19歳で渡米。米国で自分の小学校時代の話をすると、とても驚かれたり、話が通じなかったり。それで、「自分の当たり前が(海外では)当たり前じゃない」ということに気づき、日本のごく普通の公立小学校で映画を撮ってみようと思ったのだとか。

私自身は、決められたカリキュラムに従って生活するのは、JICA海外協力隊の訓練所(2ヶ月半)時代はとても好きでした。一方で、人と同じことをやるのが嫌い、という面もあります。この映画は、「同調圧力を感じる」といった意見もあるそうですが、私は観てよかったと思ったし、一年間もよく追っかけて撮影できたな・・・と頭が下がる思いでした。

日本の教育制度についてはネガティブな面ばかり見ていましたが、この映画を見て、そうでない面もあることに気づかされました。

以下の動画、映画の中の23分半ぐらいを切り取っているんですが、15分目くらいから最後までが印象的でした。映画ではカットされている場面も複数含まれています。

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編集後記

きのう京都で編集者の方とお会いし、大阪の洋食イデルミでみなさんとお会いし、今日はこれから滋賀県の立命館大学で講演します。

立命館大学食マネジメント学会での講演 パンフレット

立命館大学食マネジメント学会での講演 パンフレット

2025年も1月なかば。あっという間に半月過ぎました。

食品ロス削減に関する政府のパブリックコメント提出は1月23日です(パル通信220号参照)。

また、恵方巻売れ残り調査への協力お申し出もありがとうございます!

今年の節分は2月2日(日)です。

2024年6月には、恵方巻売れ残り調査について取材を受けた記事がBBCで公開されました(日本語版はこちら)。

2月2日(日)夜21時から24時までの時間帯のどこかで、1店舗でも構いませんので、協力してくださる方は、「コメント機能」でコメントいただければうれしいです(書き手のみに送る、もしくは読者全員に送る、どちらかを選択できます)。

2025年1月15日

井出留美

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