ミラノから学ぶ、食と貧困のサステナビリティ ~ 日本で報じられないアースショット賞に学ぶ パル通信 (12)
今回は、英・ウィリアム王子らが創設した、地球環境改善の取り組みなどを表彰する環境賞である「The Earthshot Prize (アースショット賞)」の重要性と、受賞者であるミラノ市の取り組みについて、受賞したイタリア・ミラノ市の事情に詳しい方への取材を交えながらご説明します。
日本では、WOTA株式会社が最終選考まで残り、「ファイナリスト」として選ばれましたが、国内でのアースショット賞に関する報道は一部にとどまっています。
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The Earthshot Prize (アースショット賞) の重要性
アースショット賞は、公式サイトがあり、賞についての説明や背景が詳しく書かれています。最も私が評価しているのは次の部分です。
The Prize aims to turn the current pessimism surrounding environmental issues into optimism, .....
アースショット賞は、環境問題を取り巻く現在の「悲観論」(pessimism)を「楽観論」(optimism)に変えることを目的としています。(拙訳)
環境問題というと、どうしてもネガティブな論調になってしまったり、意識が高い一部の人だけが賛同して他の人が反対する、となってしまったり、上手にコミュニケーションをとるのが難しい問題です。先日のレジ袋有料化の記事でも、それを痛感しました。
アースショット賞は、眉間にしわを寄せて解決しよう、というものではなく、チャレンジすることにやりがいや楽しさを見出し、そういう取り組みを評価するといった姿勢が感じられます。
公式サイトには、賞の意義や創設経緯について、次のような内容が書かれています。文章中にある「ムーンショット」は内閣府の国家プロジェクトに名付けられており、私もムーンショット型農林水産研究開発事業の評議委員になっています。
アースショット賞は、歴史上最も権威のある地球環境賞です。今後10年間で地球に変化をもたらし、地球の修復に貢献することを目的としています。
アースショット賞は、ジョン・F・ケネディ大統領が1960年代に人類を月に送るという組織的目標のもとに何百万人もの人々を団結させ、新技術の開発を促進した「ムーンショット」にヒントを得て、5つの「アースショット」(「自然保護と回復」「大気の浄化」「海の蘇生」「廃棄物のない世界の創成」「気候変動の修復」)を中心に構成されています。これは、2030年までに達成されれば、私たちすべての世代の生活を向上させることができるという、シンプルかつ野心的な地球の目標です。
ケンブリッジ公爵・公爵夫人のロイヤル・ファウンデーションは、今日の最大の課題に取り組むために人々を結びつけ、両殿下や社会にとって重要なさまざまな問題に影響を与えています。英国王立財団は現在、2021年末にアースショット賞が独立するまで、アースショット賞を運営しています。
初の授賞式での受賞者5名も紹介されています。5名の各受賞者には、それぞれ100万ポンド、日本円にして1億5,600万円の賞金が授けられるそうです。
日本ファイナリストのWOTA株式会社の取り組み
日本のWOTA株式会社は最終選考まで残り、「ファイナリスト」として選ばれました。
WOTA株式会社は、東京大学発のスタートアップ企業。水を使っては捨てるという、いわば「水道依存社会(大規模集中型)」から、「小規模分散型水循環社会」への移行を実現することを目的とした会社です。
WOTA株式会社が最初に開発した製品は「WOTA BOX」でした。これは、生活排水の98%以上を再生し、循環利用することを可能にする製品です。水の利用効率を、従来の50倍以上に高めることで、水不足を抜本的に解決し、排水を極小化し、環境汚染のリスクを最小化します(WOTA株式会社公式サイトより)。
ここ数年間に発生した国内の自然災害時にも、WOTAの製品が大活躍しています。
アースショット賞のファイナリストは、WOTA株式会社含めて15団体。ファイナリストはは、The Earthshot Prize Global Aliance(世界の慈善団体・NGO・民間企業のネットワーク)から、取り組み拡大のための支援を受けることができます。
それにしても、750件の応募の中から、わずか15件しかファイナリストに残れないとなると、競争率50倍ですね。。。
アースショット賞が設けられて初めてとなる2021年は、10ヶ月にわたって世界規模の調査が行われ、世界から750件以上の候補者が集まり、そこから15名のファイナリストが選ばれました。専門家による諮問委員会がサポートし、厳格な選考プロセスを経て選ばれたとのこと。審査員として、宇宙飛行士の山崎直子氏も参加しました。
この5つの区分のうち、WOTA株式会社は「廃棄物のない世界の創成」(WASTE-FREE WORLD)でファイナリストに残ったわけですが、では、この分野で受賞者となったのは、誰でしょう?
それが、イタリアのミラノ市です。食品ロス削減の取り組み「Food Waste Hubs」で、この分野の受賞者となりました。
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