徳島のうまいもの 世界パティシエ大会優勝の店 パル通信(108)

2023年4月12日から19日まで、講演と取材で、愛媛県松山市と徳島県をまわってきました。現地のおいしいものをご紹介します。
井出留美 2023.04.23
誰でも

こんにちは。4月12日から、愛媛県松山市と徳島県に出張し、高松経由で帰ってきました。いつもニュースレター「パル通信」をお読みいただき、ありがとうございます。今回は、徳島で出会った「うまいもの」をご紹介します。

「食品ロス」問題に関する理解を深め、解決に結びつけるために、データや情報を示す記事を書くことは重要です。それと同時に、食べ物を好きになること、食に対して愛情を持つことも大切だと考えています。

「うまいもの」特集を読んで、家族でお店に行ってくださったり、ニューヨーク在住の方がお友達に情報を送ってくださったり、活用している事例を伺って、うれしく思います。きのうは、サポートメンバーの方(お父様)とその娘さんご夫婦で、私が以前「パル通信」で紹介した店に行ってきました。4人で食事していたら、そこに飛び込みで食品企業にお勤めだった方も入られて、なかなかおもしろい会でした。お父様のご紹介で、娘さんも「パル通信」のサポートメンバーになってくださっていました(ありがとうございました!)

本記事は、どなたでもお読みいただけます。サポートメンバーのみなさまのおかげで、取材に行くこともできますし、広く多くの方にお読みいただきたい記事を無料でお届けすることができます。また、食の機会を提供する組織への寄付も、ささやかながら、折に触れて、おこなっています。いつも食品ロス削減や啓発に関する活動を支援していただき、感謝申し上げます。

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世界パティシエ大会優勝!パティシエの店「YUZU CAFE Kitchen」

徳島には、世界パティシエ大会で優勝したパティシエの店があります!それがYUZU CAFE Kitchen(ユズカフェキッチン)です。

JR徳島駅改札そばにあるYUZU CAFE Kitchen(筆者撮影)

JR徳島駅改札そばにあるYUZU CAFE Kitchen(筆者撮影)

パティシエの世界大会は「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」と呼ばれ、2年に1回、開催されています。今年2023年は1月20日・21日に、フランスのリヨンで開催され、世界17カ国が参加しました。

毎年、その年のテーマが発表され、今回のテーマは「気候変動」でした。参加チームは、気候変動をあらわす飴細工やチョコレート細工、シェアデザートなどで、その技を競います。

テレビでの報道では、優勝候補として、日本とともに、強豪のフランス、イタリアが挙げられていました。日本は過去に1991年、2007年にも優勝しています。

毎回、3名がチームを組んで参加します。今回の3名 のうち、徳島で店を開いているのが柴田勇作さん。2021年、東京から徳島へ移住し、ゆずを使ったスイーツの店を開店しました。徳島のご出身ではなく、東京ご出身なんですね。

当初は徳島空港の中に開店したそうですが、コロナ禍でお客さんが少なく、現在は、JR徳島駅の改札そばに店舗を構えています。それがYUZU CAFE Kitchenです。徳島の木頭(きとう)柚子を使ったお菓子を作っています。木頭柚子は、他の柚子に比べて、香りが高く、酸味が強い特徴があるとのこと。

数ある商品の中でも、一番人気は「柚子の実-kito yuzu-」。木頭ゆずチョコレートでコーティングして、木頭ゆずの形に仕上げたケーキです(下の写真、左)。木頭ゆずを使ったソフトクリームは、とろけるようななめらかさ(下の写真、右)。

(左)柚子の実 (右)木頭ゆずソフト(筆者撮影)

(左)柚子の実 (右)木頭ゆずソフト(筆者撮影)

柚子の実の中にはジュレやコンフィチュールが入っていて、ムースでくるまれています。

柚子の実(筆者撮影)

柚子の実(筆者撮影)

2023年2月2日付の徳島新聞は、一面で、世界大会での優勝を大きく報じており、柴田さんが特集された記事のコピーが店頭にも掲示されています。

2023年2月2日付の徳島新聞を掲示しているYUZU CAFE Kitchenの店頭(筆者撮影)

2023年2月2日付の徳島新聞を掲示しているYUZU CAFE Kitchenの店頭(筆者撮影)

いろんな商品を買って味見した上で、常温保存できて、箱に入れてもこわれにくい、マドレーヌとマロンを買って、身内へのお土産にしました。ラスクは、一般的なものよりしっとり感があって美味しかったです。

全商品ではないですが、オンラインストアで通信販売もしています。よかったらお試しくださいね。

YUZU CAFE Kitchen 徳島駅店

〒770-0831 徳島県徳島市寺島本町西1-61

徳島駅クレメントプラザ1F

TEL. 088-655-8883

営業時間 10:00〜19:00

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活魚料理「びんび家」

徳島県鳴門市にある活魚料理「びんび家(びんびや)」。徳島の言葉で「びんび」は「ピンピン跳ねる新鮮な魚」を意味しているそうです。

JICA海外協力隊のフィリピン隊員同期で徳島在住の友人が教えてくれました。行ってびっくり、午前10時台なのに、たくさんの人が行列しているのです。記名式になっており、来た順番で、名前と人数、椅子席か座敷席かなどの希望を書き込み、待機します。

びんび家のメニュー。多くの人は定食を頼んでおり、「おまかせ」も刺盛も相当なボリューム(筆者撮影)

びんび家のメニュー。多くの人は定食を頼んでおり、「おまかせ」も刺盛も相当なボリューム(筆者撮影)

注文して、テーブルに料理が届いてびっくり。

相当な量があります。

われわれJICA海外協力隊OV(OB/OG)4人は、おまかせ定食(下の写真、上2人)と、刺盛定食(下の写真、下2人)を頼みました。真上から撮影したので大きさはわかりづらいですが、少食の人には食べきれないくらいの量です。お味噌汁は、海鮮の出汁がきいてて、味わい深いものでした。本場の鳴門わかめもたっぷり。

おまかせ定食(上2人)と刺盛定食(下2人)(筆者撮影)

おまかせ定食(上2人)と刺盛定食(下2人)(筆者撮影)

厨房の前には、ガラスケースに一品料理が並んでおり、定食などに追加して頼めるようになっています。定食だけでも相当お腹いっぱいになります。メニューの全体像がわかる記事も公開されています。

鯛のあら煮(右)とサワラの煮付け(筆者撮影)

鯛のあら煮(右)とサワラの煮付け(筆者撮影)

この店が人気なのは、新鮮な魚がもりだくさんで食べられることのほかにも、お店が瀬戸内海の目の前にあるのも理由の一つでしょう。国道11号線沿いにあり、この道は海岸線沿いに走っています。大塚国際美術館や、鳴門の渦潮船からも近く、車で来る人がほとんどです。

神戸から淡路島経由で徳島県鳴門市に来る人も多いようで、関西ナンバーの車も目立ちました。

徳島県(筆者撮影)

徳島県(筆者撮影)

活魚料理 びんび家

徳島県鳴門市北灘町粟田ハシカ谷20-2

月~金: 9:00~16:00(ラストオーダー15:30)

土・日・祝  9:00~21:00(ラストオーダー20:30)

定休日:無休

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RISE & WINのクラフトビール

パル通信74号では、広島・松山・上勝・高松のうまいものを紹介しました。そこで紹介したのが徳島県上勝町のRISE & WIN(ライズアンドウィン)

RISE & WIN(筆者撮影)

RISE & WIN(筆者撮影)

クラフトビールを醸造しており、ビールの量り売りもしています。それだけでなく、規格外の鳴門金時(さつまいも)を黒ビールに使ったり、柑橘類の一種、柚香(ゆこう)の皮や絞りかすを白ビールに使ったりなど、食材を廃棄せずに活かすアップサイクルの取り組みや、醸造過程で出た大麦のかすを堆肥にし、そこで育てた大麦でまたビールを作る「リサイクルループ」をまわすなど、持続可能な取り組みをおこなっています。

2019年10月に初めて上勝町へ行き、Yahoo!ニュース個人に記事を書きました。そのあと、コロナ禍で行けませんでしたが、2022年9月、再び訪問することができ、朝日新聞SDGsACTION! や、エシカルはおいしい!!など、連載コーナーで紹介しています。

徳島県上勝町は、徳島市内から車で片道1時間。公共交通機関のバスも便数が少ないので、やはりレンタカーで行くのがおすすめ。車を運転しない人は、会員登録した上で、ボランティアタクシーを予約するとよいです。一般のタクシーより金額を安く抑えて、上勝町民のボランティアさんに運転してもらうことができます。私も初回に行ったとき、教えてもらって使いました。

RISE & WINのビール、徳島市内でも買うことができました。一つは、JR徳島駅前にあるアミコ徳島(もともと、そごうが入っていたビル)の、いわゆるデパ地下です。RISE & WINのビールが6種類そろっています。もう一つは、徳島駅に直結している徳島駅クレメントプラザの地下にある土産店です。

私はモーニングサマーやホワイトが好きなので、複数本、購入しました。

RISE & WINのクラフトビール(筆者撮影)

RISE & WINのクラフトビール(筆者撮影)

東京タワーの近くにも店舗がありますし、オンラインショップもあるので、のぞいてみてください。

徳島県上勝町  徳島県勝浦郡上勝町正木平間237-2

東京都港区   東京都港区東麻布1丁目4-2 THE WORKERS & CO 1F

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徳島県つるぎ町のあたご柿

ほかにも、徳島県美馬(みま)市美馬町にある、道の駅みまの里で購入した、つるぎの干し柿(あたご柿)が美味しかったです。普段、干し柿は、食感がぬちゃーっとして、あまり好きではないのですが、ここで買ったものは、ドライで、ワインのおつまみにも合うので、美味しかったです。同じものはネット上で見当たらなかったのですが、三誠ネットショップなどで同じような干し柿が買えるようです。

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講演と取材の合間を縫って、4月16日(日)には、徳島県鳴門市にある大塚国際美術館に、2013年以来、訪問しました。北イタリアのパドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂を模して作った礼拝堂を、JICA海外協力隊時代の友人が紹介してくれました。座っていると、なんだか落ち着く場所でした。

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今日の書籍

『世界の食卓から社会が見える』(岡根谷実里著、大和書房)

世界の台所探検家、岡根谷実里さんが、新著を発表されました。『世界の食卓から社会が見える』(大和書房)。帯には

ヨーグルトは本当にブルガリアの伝統食なのか?

牛肉大国のボツワナでなぜ虫を食べるのか?

などと、興味を惹く文章が並んでいます。

これまで世界60以上の国や地域を訪問してきた岡根谷さんが、食と政治、食と宗教、食と地球環境、食の創造性、食と気候などについて語ります。本の中のカラー写真はご自身で撮影され、グラフや表まで!エビデンスをもとに自作されていて、頭が下がります。

中華文化圏の項では食品ロスやごみ問題も取り上げていただいていてうれしく思いました。(書店でパッと開いたら、たまたま食品ロスのページでびっくり!!)

これまで、中国では「お客には、食べきれないほどの料理を出すのがおもてなし」という風潮がありました。客として招かれた側は「食べ残すのがマナー」だとされてきました。ですが、2020年、ついにこの中国でも、食料廃棄をなくすための法律ができたのです。「反食品浪費法」という名前の法律です。ちょうどコロナ禍でしたし、米国との関係性が悪化している時期だったので、この背景には食料輸入への不安や、食料危機の問題があるのでは、と海外メディアが報じました。これに対し、中国側は「食料の備蓄は十分にある」と反論した、という経緯があります。この反食品浪費法では、「大食い動画をアップすると罰金」など、中国らしい内容が見られます。

実は2013年にも、中国では「光盤運動」が進められていました。お皿(盤)をきれいにする(光)、すなわち、食べきり運動です。なぜ7年も経って、また食品ロスを減らそうとしているのか(以前、記事に書きました)。

日本では、すでに10年以上前から、コメよりパンの方が家庭の支出額が多くなっています。背景に「食の欧米化」が挙げられますが、ではなぜ、コメよりパンの方が食べられるようになったのか。かつての米国の(農産物輸出)戦略などを知ると、日本の対外政策は本当に甘いな、と落胆します。いいようにやられている感じ。

ただ単純に食事の「おいしい」「まずい」ではなく、その食や食材の背後にあるものを深く探っていく、岡根谷さんの姿勢、探究心、好奇心、行動力、取材力、語学力など、そのすべてに頭が下がります(岡根谷さんも「パル通信」読んでくださり、ありがとうございます!)。

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今日の映画

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』(第26作)

ロケ地として、北海道のほか、徳島県鳴門市が採用され、厳島神社や霊山寺、ツーリングでおすすめの鳴門スカイラインの展望台などで撮影されています。

寅さん映画の中で私が一番好きなのは、第17作目(寅次郎夕焼け小焼け)です。

2011年3月11日の震災を機に、それまで勤めていた食品企業を辞めましたが、勤めていた時には、日曜日の夜、翌日出勤するのが憂鬱な気分のときもありました。でも、『男はつらいよ』のDVDを観ると、なんだか、寅さんに励まされる気持ちでした。人生、うまくいくことばかりじゃないよね、そうだよねって思わされ、気持ちがラクになったのかもしれません。

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編集後記

拙著『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)の感想文を書いて、内閣総理大臣賞を受賞した水谷日菜美さんの感想文が、第68回青少年読書感想文全国コンクールの公式サイトに掲載されました。全国から297万通以上の感想文が寄せられ、その中から、対象学年でたった一人が最優秀賞(内閣総理大臣賞)に選ばれます。なんとなく、そんなコンクールをやっていることは知ってはいましたが、そんなに応募が来るものだったのですね。(自分では一度も出したことがありません)

受賞した感想文の作品をまとめたものは、4月末、毎日新聞社から『考える読書』と題して出版されます。私も「e-hon」サイトで予約してあります。

4月25日には日本経済社による企業向け講演、5月2日にはキヤノンマーケティングジャパン様の新人研修、5月9日にはUAゼンセン様の講演に登壇する予定です。いずれもテーマは食品ロスでクローズド(対象者限定)です。いずれも企業の皆様向けですが、対象者がそれぞれ異なりますので、基本編をのぞくと、すべて別々の内容になっています。

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4月も残り少なくなりました。寒暖の差が激しいので、お互い、体調管理に気をつけて、5月を迎えましょう!

2023年4月23日

井出留美

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