トランプ氏は連邦政府の気候変動対策を阻止するかもしれない。が、前進の機会は残されている

ニュースレター「パル通信」226号では、再選されたトランプ氏と米国および世界の気候変動対策について、世界資源研究所が発表した記事を解説します。
井出留美 2025.01.25
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ニュースレター「パル通信」226号では、大統領に再選したトランプ氏と米国・世界の気候変動対策について、就任前に世界資源研究所が発表した内容について、翻訳したものをお送りします。

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世界資源研究所「気候変動対策への悪影響は甚大」

世界資源研究所は、「トランプ大統領の当選により、米国は政策の変化に直面しています。気候変動や環境対策への潜在的な悪影響は甚大です」と述べています。

以下は、世界資源研究所の発表です。

最初のトランプ政権でも、トランプ氏は、大統領就任当初、人や地球を守るために不可欠な125の環境保護政策を廃止しようとしながら、連邦政府の気候変動対策を骨抜きにしてきました。これらの試みの多くは裁判所で覆されたり差し止められたりしました。が、トランプ氏が再び大統領に就任すれば、気候や大気、水、脆弱な地域社会を守るための法律や規制を弱体化させることに、より成功する可能性が高いでしょう。
予想される主な後退には、環境保護庁や内務省といった気候変動対策に重点的に取り組む機関の大幅な予算削減、気候変動に敵対的な人物をトップに据えること、石油・天然ガスの生産拡大とクリーンエネルギー開発の制限、インフレ削減法による数十億ドルの未使用資金の撤回と、その資金を炭素排出量の多い活動への再配分、環境正義の取り組みの解体などが挙げられます。連邦政府の気候変動政策は凍結され、米国が排出削減目標を達成することはほぼ不可能になるでしょう。
米国は気候変動に関するパリ協定から離脱しました。国際的には脆弱な国々への気候変動対策資金援助を削減することが予想されます。これらは数多く考えられる後退のほんの一部です。

では、引き続き、世界資源研究所の、トランプ大統領再選による「11の気候変動対策の後退」について、11項目の指摘を順番に見ていきましょう。

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トランプ大統領就任下における11の潜在的な気候変動対策の後退

1.新たな連邦政府の気候変動政策はなし

トランプ大統領の2期目における最も大きな課題のひとつは、連邦政府による新たな気候変動対策法案の欠如でしょう。規制緩和と化石燃料の支援に重点を置く大統領のもとでは、排出削減やクリーンエネルギーへの投資を目的とした連邦政府の取り組みは停滞する可能性が高いでしょう。インフレ削減法や超党派インフラ法などの政策は前進の基盤となるものの、新たな連邦政府の政策が欠如すれば、米国の気候変動目標と実際の排出量軌道とのギャップはさらに広がることになります。

2. 気候変動対策機関の予算削減と気候変動に反対する組織の長

トランプ氏の支持者によって作成されたロードマップ「プロジェクト2025」では、気候変動対策を主導する機関、特に環境保護庁(EPA)と内務省(DOI)の大幅な予算削減が推奨されています。 予算が削減されれば、排出削減プロジェクト、クリーンエネルギー奨励策、環境保護などの既存のプログラムを管理する能力が妨げられることになります。また、プロジェクト2025では、米国地球変動研究プログラムや米国海洋大気庁(NOAA)などの連邦科学機関の大幅な見直しも提案しています。

さらに、トランプ氏は、米国の石油および天然ガスの生産量を増やす努力をしながら、可能な限り多くの気候政策を廃止することに専念する政府機関のトップを任命すると公言しています。

3. 気候変動対策資金の再配分

予算の削減に加え、トランプ氏はインフレ削減法に基づく「未使用の資金の全額取り消し」を公約しています。 こうした資金の90%近くがすでに支出されていますが、それでも数十億ドルが残ることになります。 このような再配分は、クリーンエネルギーへの投資を損ない、発電や輸送といった主要部門における排出削減を遅らせることになります。

4. パリ協定からの離脱

トランプ大統領が就任中にパリ協定から離脱したことで、米国の国際的な気候政策への影響力は弱まり、同大統領は米国を協定から再び離脱させると明確に述べています。

(筆者注:トランプ大統領は「私はただちに不公平で、一方的なパリ協定から離脱する」と述べて、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名した)。


トランプ大統領の同盟者も、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からの離脱を示唆しており、米国は気候変動への取り組みに関する多国間努力や国際的な経済機会からさらに孤立することになります。トランプ大統領は、森林伐採への対応など、主要な国際イニシアティブにおける米国の協力を打ち切る可能性もあります。

2017年に米国に追随してパリ協定から離脱する国は現れず、今回もそうなる可能性は低いものの、米国が離脱すれば、他の主要排出国に対して気候政策で野心的な姿勢を取るよう影響力を及ぼす米国の力が弱まることになります。(筆者注:アルゼンチンのミレイ大統領は、トランプ大統領に同調し、パリ協定からの離脱を検討していると報じられた。日本経済新聞 2025/1/25

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