「他者への不寛容さ」が日本の幸福度を下げている パル通信(83)

先日、スウェーデン大使館の方と話しているとき、ある質問を受けて、世界幸福度ランキングを思い出しました。
井出留美 2022.12.23
誰でも

「パル通信で何か書いてみませんか」との問いかけに対し、なんと、2桁の人数におよぶ方々からご応募をいただきました。ありがとうございます!theLetter事務局が、応募内容を拝見しています。パル通信は、食品ロスや食に関すること、サステイナビリティについて書いていますので、できれば、そのテーマや趣旨に沿った内容で書いていただけるとうれしいです。

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12月25日(日)17:00-17:50、NHKラジオ「ちきゅうラジオ」に生出演します。テーマは「食品ロスを考える 北欧編」です。

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今年10月に、EUと日本の食料問題に関するシンポジウムがあり、モデレーターを務めました。その際、スウェーデン大使館でインターンをしている方と知り合い、先日、その方の上司を交えてお話しました。そのとき「well-being(ウェルビーイング)についてどう考えるか」と問われたのをきっかけに、『世界幸福度報告書』のことを思い出したのです。今回は、そのことについて書いてみます。

  • 『世界幸福度報告書』とは

  • スウェーデンは7位、日本は・・・

  • なぜ日本の順位は低いのか

  • 低順位の要素は食品ロスにつながる?

  • 「最も貧困な人を助けるべき」47カ国中、最低なのは?

  • ウェルビーイング(well-being)とは

  • 今日の書籍

  • 今日の映画

  • 編集後記

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『世界幸福度報告書』とは

『世界幸福度報告書』は、世界150カ国以上で、その国に住む人々が、自分たちの生活をどのように評価しているか、調査データを用いて報告するものです。毎年報告され、今年2022年には10周年を迎えました。

『世界幸福度報告書』は、国連機関の「持続可能開発ソリューションネットワーク」(SDSN)が毎年発表しています。基となるデータとして、ギャラップ社という、米国の世論調査とコンサルティングをおこなう企業の「世界世論調査データ」を活用しています。ギャラップ社は、1935年にジョージ・ギャラップさんという方が立ち上げたので、創業者の名前が社名になっています。1995年には日本オフィスである「ギャラップ・ジャパン」も誕生しています。

『世界幸福度報告書』の公式サイトには、支援団体として、次のように書かれています。

この報告書は、エルネスト・イリィ財団、illycaffè、ダヴィネス・グループ、ユニリーバ最大のアイスクリーム・ブランドであるウォールズ、ブルーチップ財団、ウィリアム・ジェフ・グロス・ファミリー財団、ハピアウェイ財団、再生社会財団によって支援されています。
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スウェーデンは7位、日本は・・・

このレポートを見てみると、スウェーデンは7位です。1位以下10位までは次の通り。

1位 フィンランド

2位 デンマーク

3位 アイスランド

4位 スイス

5位 オランダ

6位 ルクセンブルク

7位 スウェーデン

8位 ノルウェー

9位 イスラエル

10位 ニュージーランド

米国は16位、イギリスは17位、26位に台湾が登場、日本は30位台にも40位台にも出てこず・・・

日本は54位でした。

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なぜ日本の順位は低いのか

ランキングがすべてを表すわけではないけれど、一つの参考材料にはなるでしょう。

なぜ、日本の順位は低いのでしょう。

このランキングは、大きく、下記の7つの項目から順位づけされています。

主観的な幸福度・1人当たり国内総生産(GDP)・社会的支援の充実(社会保障制度)・健康寿命・人生の選択における自由度・他者への寛容さ(寄付活動など)・国への信頼度

この中で、前半の5つに関しては、ランキング上位の国とさほど差はないのですが、最後の2つ、「他者への寛容さ」と「国への信頼度」が低く、それが、全体的な順位を押し下げているようなのです。

出典:World Happiness Report 2022
出典:World Happiness Report 2022

レポートはすべて英語です。

ELEMINISTの記事では日本語で解説されています。

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寛容さの低さは食品ロスにつながる?

この「寛容さの低さ」というのは、私なりの分析ですが、食品ロスの発生にもつながっているのではないかと感じています。

たとえば、野菜や果物の大きさや見栄えなど、規格や基準の厳格さが生み出す食品ロス。

安全性の面で、リスクを回避し「ゼロリスク」を達成したいがために生まれる食品ロス。

災害時の支援食料を「平等」に配布できないために生まれる食品ロス。

などなど。

柔軟に考えれば、もっと多くの食料や食品が救われるのに、規格や基準、安全性、平等性を杓子定規に考えて、その結果、無駄が多くなる。

知人の編集者に、世界幸福度調査のことを伝えたところ、

食品ロス問題やSDGsも「他者への貢献」と捉えると、幸福度と食品ロスには何かしら関連があるのでは?幸福度が高い国には高福祉の国が多い。福祉で生活が保障されていることが、他者貢献の余裕を生み出す。逆に日本では、今の生活や将来に不安を覚える人が多く、他人の生活や将来まで考える余裕がない、と見ることもできるかもしれないですね

というご意見をいただきました。

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「最も貧困な人を政府が助けるべき」日本は47カ国中、最低

Yahoo!ニュース個人の記事で時々引用しているデータがあります。米国のシンクタンクPew Global Attitudes Projectの調査(2007年10月発表)です。

これによると、「政府は、最も貧困状態にある人を援助すべきである(State Should Take Care of the Very Poor)」という質問に対し、「完全に同意する(Completely agree)」と回答した人の割合が、日本は最も低いんですね。調査対象47カ国中、日本(15%)は最低。「ほとんど同意(Mostly agree)」の割合も日本が最低(59%)。これも、「他者への不寛容さ」を示すデータの一つではないかと考えます。

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well-being(ウェルビーイング)とは

もともと、スウェーデン大使館の方に聞かれた質問は、

「well-being(ウェルビーイング)について、どう考えるか」

というものでした。

「世界幸福度報告書」に登場する「well-being」という言葉は、「幸福」や「健康」という意味も持ちます。

世界保健機関(WHO)憲章の前文では、

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity." "健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます(日本WHO協会仮訳)“

と書かれています。

well-beingとは、幸せを感じ、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態のこと。

このランキングでは、北欧やヨーロッパが多く上位を占めています。私も2位のデンマークや、5位のオランダ、7位のスウェーデンへ取材に行ってみた経験から、少なくとも、この3カ国の結果は納得できるものでした。

あなたは「well-being(ウェルビーイング)」について、どう考えるでしょうか。

「世界幸福度報告書」について、全部で154ページにわたる「フルレポート」をご覧になりたい方は、こちらをクリックしてください。

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今日の書籍

『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』(幻冬舎文庫)

名門「コート・ドール」のオーナーシェフをつとめる斉須政雄さんの本です。食や料理のことを書きながらも、人生論や仕事論も述べられていて、ロングセラーになる理由が納得できます。

この本は、斉須さんが語った内容を、プロのライティングでまとめたものです。この本を実際に書いたというライターの方にも、ひょんなきっかけでお会いしました。

本の中には「若い時は早くゴールしたいと感じているでしょう。(中略)でも、早くゴールしないほうがいいんです」と書いてあります。ある程度、年齢を重ねた方なら、その理由が推察できるでしょう。

斉須さんのインタビュー記事からも、多くのことが学べます。飲食業界の方は、ぜひ、記事をはじめ、著書を読んでみてください。

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今日の映画

『ラブ・アクチュアリー』(2003)

この時期、お勧めといえば、クリスマスをテーマにした名作『ラブ・アクチュアリー』でしょう。まさに「well-being」(幸福)を絵に描いたような内容です。

中でも私の好きなのは、英国の首相役を演じた俳優、ヒュー・グラントが、曲「J.U.M.P」にあわせて踊るシーンです。何度観ても笑ってしまいます。

この動画には、音楽『J.U.M.P.』をBGMにして、映画の見どころシーンがまとめられています。

この映画からおよそ20年経ち、当時のキャストが勢揃いした特別番組『Love Actually: 20 Years Later』が、今年2022年11月29日、米ABCで放送されました。観たかったです...。

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編集後記

冒頭でご紹介しました通り、あさって12月25日(日)17:00-17:50、NHKラジオ「ちきゅうラジオ」に生出演します。まさかクリスマス当日にNHKに行くことになるとは・・・

しかも今年は12月28日-29日にも泊まりの出張があり・・・

今年に入ってから、監修の書籍2冊が同時進行しています。

時間が足りない。そんな中、約束した時間は守ってほしいなあと思う出来事もありました。

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もうすぐ仕事納めの方もいらっしゃるでしょうか。

どうぞ楽しい週末をお過ごしくださいね!

2022年12月23日

井出留美

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