5千件から大賞に選出 お供えものをおさがりとしておすそわけ「おてらおやつクラブ」 パル通信(114)
2013年に、奈良県・田原本(たわらもと)にある安養寺(あんようじ)で始まった「おてらおやつクラブ」の活動。お寺のお供えものを、食べ物を必要とするひとり親家庭の子どもたちにおすそわけしています。
2023年5月の今では、宗派を超えて、全国47都道府県、1,870のお寺に広がりました。奈良の地方にある、たったひとつの寺から始まった活動。全国グッドデザイン大賞では、4,789件もの応募の中から、最優秀賞にあたる「大賞」に選ばれました。何が評価されたのでしょうか。
この記事を書いた理由
コンビニよりお寺の方が数万多く存在している(コンビニは2023年3月現在で55,739、お寺は2022年度で76,774)。お寺は、土地やお供えがあるので、東日本大震災を契機に、お寺が社会にできることを模索する機運が生まれ、実際に活動している民間組織や大学の研究者たちがいる。だが、まだ十分知られておらず、この活動を知らせるため。
また、2023年5月末までおてらおやつクラブが続けているクラウドファンディング(給食がなくなる夏休みに、ひとり親家庭の子どもたちに食べ物を届ける)を知っていただくため。
この記事でわかること
おてらおやつクラブの成り立ちや活動の概要。
感想や評価を当事者に伝える大切さ。
2013年5月24日の母子餓死事件が活動のきっかけ
ちょうど10年前、2013年5月24日、28歳の母親と3歳の男の子が、大阪市北区天満(てんま)のアパートで餓死しているのが見つかりました。
母親のメモには、こう書いてありました。
「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」
この事件を知ったのが、奈良・安養寺(あんようじ)の住職、松島靖朗(せいろう)さんです。当時、自身も父親になったばかりの松島さんは、この飽食の時代、食べられないで子どもが死ぬという現実に衝撃を受けました。
自分も何か せな(しなければ)、と思い、お寺にあるお供えものを、必要な方へと届けたのがきっかけで始まりました。2013年8月のことです。松島さんが、たったひとりではじめました。
翌年2014年1月、もう一人が加わり、松島さんと2人で事務所を立ち上げました。
おてらおやつクラブと筆者の関係
私が「おてらおやつクラブ」を知ったのは、この頃です。