【内部告発】セブンが隠したい食品ロスの実態、SDGsウォッシュを賞賛するマスコミの機能不全 パル通信(104)
2023年4月3日付の日経新聞や、4月4日付のFMNプライムオンライン(フジテレビ系)で、食品ロス削減の取り組みが賞賛された最大手コンビニ。関係者の方から、実際、どれくらいの金額の食品を捨てているのか、内部資料を送っていただきました。
この記事を書いた理由
▷リスクを冒して内部告発し「発信してほしい」と願いを託された方の意思を尊重するため。
▷11年前の2012年、国と食品業界がすでに進めていた、食品ロス削減のための3分の1ルールの緩和。11年経った2023年の今になって「食品ロス削減しています」とアピールする最大手コンビニが、実際、どれくらいの食品を捨てているのかを読者の方に知っていただくため。
▷「SDGsウォッシュ」とも言える表向きのアピールを見抜けない大手マスメディア。その代わりに実態を知らせる必要があると考えたため。
この記事でわかること
▷日経やFMNプライムオンライン(フジテレビ系)が紹介した、最大手コンビニの食品ロス削減が、なぜ見かけ上に過ぎないのか、その理由
▷最大手コンビニの店舗が実際にどれくらいの金額の食品を捨てているか
2023年4月3日付の日本経済新聞。セブン&アイ・ホールディングスが、傘下のコンビニエンスストアやスーパーなどで、納品期限を緩和すると報じました。同じ件を、4月4日付のFMNプライムオンライン(フジテレビ系)も動画入りで報じています。
3分の1ルールとは、賞味期限の期間を3分の1ずつ均等に区切って、食品を製造してから最初の3分の1までで納品しないといけない「納品期限」、次の3分の1までで販売しきらないといけない「販売期限」を設け、それが過ぎれば、たとえ賞味期限がたくさん残っていたとしても納品・販売できないとするものです。できる限り新鮮なものを顧客に届けようとするためのルールで、業界の商慣習です。法律ではありません。このルールによって、年間1,200億円以上のロスが発生していました。私が「環境イノベーション情報機構」から取材を受けた時も、このルールによって、年間1,235億円のロスが発生していたときの資料を使っています。
消費者庁の資料をもとに(株)office 3.11制作
諸外国では、この納品期限は、もっとゆるく、長くとっています。たとえば米国なら2分の1、イタリアなどのヨーロッパは3分の2、イギリスは4分の3と報告されていました(流通経済研究所による)。納品するのに日数的な余裕があれば、それだけ食品ロスになりづらい、というわけです。
納品期限の緩和は11年前の2012年に国と食品業界で始めている
では、食品ロス削減のために納品期限を緩和することは、非常に画期的な取り組みなのでしょうか。
そんなことはありません。
すでに2012年から、国(農林水産省)と流通経済研究所、食品業界が、毎年ワーキングチームを作って、納品期限緩和を進めてきたからです。
11年経って、今さら、なぜ「食品ロス削減してます」アピールをしなければならないのでしょうか。
今から11年前、2012年9月29日付の読売新聞は、食品ロス削減を進めるため、3分の1ルールを緩和する方針を決めたと報じています。私も、2012年10月1日、このことを取り上げて、「オンエアナビ」というコラムで執筆しました。
3分の1ルールは、2012年当時、まだほとんど知られていませんでしたが、この年の4月、これを知らせるコラムも書いていました。
この年、2012年6月1日に出演したNHKの『特報首都圏』でも、3分の1ルールについて説明しました。まだ一般には知られていなかった頃です。
2012年6月1日に放送されたNHK『特報首都圏』の映像(筆者撮影)
そして、このルールによる食品ロスを削減すべく、ルール緩和に向けてのワーキングチームが2013年以降も毎年立ち上がってきたのです。
2012年10月初旬の立ち上げの時期、覚えていますよ。当時、広報をつとめていたフードバンクのセカンドハーベスト・ジャパンに、複数のテレビ局や新聞社が押しかけたのです。今回、FMNオンライン(フジテレビ系列)では、あたかも初めてのトピックスみたいに報じていますが、2012年10月当時を検索してみたら、フジテレビも報じてましたね(2012年10月3日、フジテレビ系列 FNNスピーク「"食品ロス"削減へ ワーキングチーム発足」。2012年10月3日、フジテレビ系列 スーパーニュース 「暗黙の"3分の1ルール" 『もったいない』食品廃棄」)
2012年からの11年間の動きを見てきた者としては、納品期限の緩和に動き出してから11年経った今になって「セブン&アイ、食品ロス削減へ納品期限緩和 中小波及も」などと、いかにも努力してます的なことを報じられても、「は?11年も経ってるのに、今さら何言っちゃってるの?」と思うわけです。
農林水産省は、2022年11月に、この緩和に取り組む事業者が大幅に増加したとしています。
本来は、納品期限をゆるめるだけでは片手落ちです。納品期限と同時に販売期限も緩和して、賞味期限や消費期限ギリギリまで販売しなければならないはずです。
もちろん、販売期限を緩和した事業者もいますが、まだまだ十分ではありません。
また、メーカーに対して欠品(品切れ)を禁じるルールも、事業系のロスを多くしている一因です。
食品ロス削減に向けて「納品期限を緩和」している最大手コンビニは、さぞや、毎月の食品廃棄金額は少ないことでしょう。
では実際にどうなのか。
関係者が提供してくださった内部資料のデータを見てみましょう。