野菜と魚、表に出ない膨大な食品ロス パル通信(38)
食料自給率が37%(カロリーベース)の日本。日本は、農林水産省と環境省が、毎年、食品ロスの推計値を公表しています。ただ、この数字には含まれていない食品ロスも発生しています。今回は、このことについてお話しします。
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生産現場で生じる隠れた食品ロス
少し古いデータですが、平成27年度の食用仕向量8,291万トンのうち、食品ロスは646万トン。要するに、日本人は、全食料のうちの7.8%程度を捨てているという計算になります。
最新の食品ロス量は、年間570万トン(2021年11月30日、農林水産省・環境省 発表)。これは、東京都民が一年間に食べる量に匹敵します(東京都環境局による)。
ただ、ここには大きく2つの廃棄がカウントされていません。一つは農場で捨てられる生産調整や余剰農産物など。農林水産省のデータによれば、野菜41品目の収穫量と出荷量の差は、年間200万トン近くあります。つまり、それだけの量が畑で捨てられていることになります。
同じく一次生産の魚では、港で捨てられる未利用魚は、年間100万トン近くあります。これも含まれていません。
ちなみに世界規模で見ると、WWF(世界自然保護基金)の発表によれば、25億トンの食料が廃棄されているとのこと。そのうち、農場での食品ロスが12億トン発生しています。
もう一つは、備蓄食品の入れ替え時に捨てられる食品です。これも、年間の食品ロスの推計値には含まれていません。総務省の調査結果によれば、国の行政機関では、備蓄食品の入れ替え時、42%の機関では全部廃棄しています。毎日新聞の調査でも、5年間で17自治体が176万食の備蓄食品を廃棄していることがわかっています。購入と廃棄にかかった経費は、少なくとも3億円にのぼると推計されています。これも、食品ロスにはカウントされていないのです。
一次生産のロスと、備蓄食品の入れ替え時のロスは、相当量あります。これらがカウントされていない以上、年間570万トンという推計値は、あくまで見かけ上のものだと私は考えています。
このあとは、野菜の収穫量と出荷量の差が、なぜ年間200万トン近くも出てしまうのか?という原因についてご説明します。
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